「楽しめるリサイクル」で“本物”の循環型社会をつくりだす──岩元美智彦

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自分たちが行う事業をこんなにも楽しそうに、しかも独りよがりでなく、きちんと相手と共有しながら伝えられる経営者は稀だろう。まるで上方の商人のようだ。その軽快な話しぶりから伝わってくるのは、リサイクルという言葉の重苦しいイメージを覆しながら、再生資源の一大プラットフォームを築き上げつつあるイノヴェイターの姿である。

衣料品を構成する綿繊維(セルロース)を分解し、バイオ燃料(バイオエタノール)をつくりだす技術。ポリエステル繊維を化学処理することで、石油由来のポリエステルと品質的に変わらぬ素材として活用できる、樹脂の小さな塊(ペレット)をつくる技術。こうしたテクノロジーの開発と、全国の小売店との連携による回収・流通の一大エコシステムの構築──。前人未踏の領域に達しつつある事業に秘められたヴィジョンを、日本環境設計の岩元美智彦に尋ねた。

岩元はとにかく、よく笑う。自ら手掛けている事業が世の中を変えていくプロセスを、心の底から楽しんでいる様子だ。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

──綿繊維からバイオ燃料をつくる技術は2008年、ポリエステル繊維を劣化させることなく再生資源に生まれ変わらせる技術は2015年に発表しました。それらの技術を活用する衣料品の回収システムも、ユニー、無印良品といった多くの小売店との連携によって成立させ、そのプラスチック版の再生事業をイオン、セブン&アイ・ホールディングスなどと展開してきました。近年は、再生可能なポリエステル生地を用いて生地を交換できる傘の企画に携わったり、ブランドと手を組んで再生原料を使用したファッションアイテムを企画・製造したりと、新たに事業を拡大しています。この動きの意味するところは何でしょうか。

優れた発想力と革新によって「新しい未来」をもたらすイノヴェイターたち。その存在を支えるべく、『WIRED』とAudiが2016年にスタートしたプロジェクトの第2回。世界3カ国で展開されるグローバルプロジェクトにおいて、日本では世界に向けて世に問うべき“真のイノヴェイター”たちと、Audiのイノヴェイションを発信していきます。

循環型社会をつくるための、“商品化”という最後のピースに差しかかっている、ということなんですね。いままで世の中では、環境が大事だ、循環型社会をつくらなければダメだとさまざまな試みが行われてきましたが、結局ひとつになることはできませんでした。どうすれば、そうした社会が達成できるだろうか──という問いが、わたしたちの事業のスタート当初からの課題なんです。

──類似のプロジェクトが各企業や担い手ごとに並列で開発・実践され、プラットフォームが形成されないというのはよくある話です。リサイクル事業もまさに、そうした状況に苛まれていた、と。

ひとつになるには、みんなをつながなければなりません。まずわたしたちは、その土台となる技術の開発に心血を注ぎました。これが綿繊維からバイオエタノールをつくる技術であり、ポリエステル繊維をヴァージンポリエステルと同等の再生ポリエステルにリサイクルする技術ですね。特にポリエステルの再生原料に象徴されるのですが、過去の再生原料はどうしても劣化して代替品にさえならない品質のものが多かった。しかし、服は服、玩具は玩具として永遠に循環させていける1:1のクオリティーにならなければ、本来はおかしな話でしょう?(笑)。わたしたちが主に開発してきたのは、そうした“2回目以降の再生”も可能な技術なんです。

このテクノロジーと並行して築こうとしたのが、地下資源ならぬ「地上資源」の経済圏です。消費者から提供してもらった衣料品を小売店で回収して技術の現場につなぎ、地上資源として再生させ、メーカーにつなぐところまでは、これまで達成できてきた。現在取り組んでいるのは、その再生原料でできた商品を消費者が小売店で購入、要らなくなればまた小売店で回収する、という次の循環のための商品づくりなんですね。

  • 1/3衣類などが再生され、小瓶に入っているようなプラスチックのペレットができあがる。その下に敷いてあるのが、このペレットを利用してつくった生地だ。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

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    2/3再生プラスチックのペレットが入った小瓶の横にあるのは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきた「デロリアン」のミニカー。資源再生プロジェクトの象徴として、綿繊維を分解してつくったバイオ燃料でデロリアンの実物を走らせるイヴェントまで実施した。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

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    3/3日本環境設計のプロジェクトに協力している企業は、小売りからメーカーまで幅広い。全国に“自然な”リサイクルのエコシステムが構築されつつある。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

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衣類などが再生され、小瓶に入っているようなプラスチックのペレットができあがる。その下に敷いてあるのが、このペレットを利用してつくった生地だ。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

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再生プラスチックのペレットが入った小瓶の横にあるのは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきた「デロリアン」のミニカー。資源再生プロジェクトの象徴として、綿繊維を分解してつくったバイオ燃料でデロリアンの実物を走らせるイヴェントまで実施した。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

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日本環境設計のプロジェクトに協力している企業は、小売りからメーカーまで幅広い。全国に“自然な”リサイクルのエコシステムが構築されつつある。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

──なるほど、リサイクルをめぐるサイクル/エコシステムが、商品化と購入というフェイズを組み込むことで完成しつつある、と。

傘は、傘ブランドを展開するサエラさんとのコラボ企画なのですが、軸となるボディーや骨組みの部分は風にも強く、使いつづけられるような品質にしてあります。これは、台風後に道端で見る傘の山を減らすことが狙いです。そのうえで、色や柄のバラエティを多く取り揃え、破れたときだけでなく季節や自分の好みの変化によっても着せ替えられるよう、単にリサイクルというだけではなく“機能”のレヴェルまでもっていこうとしています。しかもその生地は、コンビニやスーパーで買うことができるように、いま取り組んでいる最中です。大量に廃棄され、家でも溜まる一方のビニール傘、あれはもう必要ありませんよ(笑)

傘に限らず、こうしたリサイクルのあり方を提示すると、ものづくりが好きな多くのブランドやクリエイターの方々も声をかけてくださいますし、何より消費者の方々にとっても、リサイクルに対するイメージが変わるでしょう。いままでリサイクルは重苦しいイメージばかり付きまとってきましたけど、環境問題がどうの、ゴミ問題がどうのといっても、興味ある人が残るだけで、ほとんど参加してくれないのは当たり前なんですよ(笑)。わたしたちはとにかく、リサイクルは楽しいものだと発信しているんです。

──楽しいリサイクルとは、どんなものなのでしょうか。

たとえば、わたしたちは2015年10月21日、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ』で、ごみを燃料にして走る自動車型のタイムマシン「デロリアン」が向かった“未来”の日付において、ユニバーサル・スタジオ公認のもと、わたしたちが再生させたバイオエタノールで「デロリアン」を走らせるイヴェントを行いました。このイヴェントには、まさに「オモロイ!」という声のもと、多くの賛同者の方々と、そして不要な衣料品が集まったんですね。衣料品からつくったバイオジェット燃料で飛行機を飛ばすプロジェクトも進めていますが、お子さんたちにもワクワクしてもらえるでしょう?

わたしはとにかく、楽しいほうがいいと思っています。そちらのほうが世の中が変わるはずなんです。もちろん、こんなに楽しげに途方もないことをいうものですから、「またホラ吹きか」と思われがちなことは承知していますが(笑)、ホラだと思われたすべてを実現してきましたから。

20代後半のころ、繊維商社の営業マンとして再生繊維のプロジェクトに従事していたんですが、難しい話をずっとやっていても、なぜか広がらないなあとモヤモヤしていました。「結局、説教みたいな話しかないじゃないか」と(笑)。それが日本環境設計の設立につながるんですが、面白くて楽しいほうが人も集まるし、プロジェクトも成長して、インプットとアウトプットも活発化するのでは、と信じています。

その視線の先には、リサイクルが「特別なこと」ではなくなる社会が見えている。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

──“モノ”から“コト”へ、とはよく言われるようになりましたが、まさに過剰な“モノ”の世界を救うには“コト”が必要だ、という逆説があるわけですね。各企業の担当者も環境部門やCSR部門でなく、販売イヴェントを行うような部門の人になることが多くなってきているようですね。

それは、まさにリサイクルに参加している消費者の方々が、企業を動かしているんですよ。わたしたちがブランドマークとして用いているハチのマークが入った回収ボックスがあるんですが、近くのスーパーにその回収ボックスがないから、文句をおっしゃったという方のお話を聞いたことがあります(笑)。実際に、プロジェクト初期の調査で、回収ボックスを置かないよりも置いたときのほうが、小売店の売り上げ利益が増加することが明らかになっています。社会の進むべき方向を感知している消費者の方々のほうが、積極的にリサイクルしたがっているんです。これまで、その気持ちを行動に移す、きちんとした受け皿としてのプラットフォームがなかっただけなんですね。

──サステイナブル(持続可能)な社会の必要性に、人々が直感的に気づいていて、その欲求を素直に巡らせることのできるエコシステムが待ち望まれていたのかもしれません。

これからは、企業の側が自分たちの姿勢を問われるようになるでしょうね。どんどんシステムが効率的になってコストも下がっていくわけですから、たとえば石油からつくられた製品と再生原料でつくられた製品の価格の差がなくなってくる。ここまでくれば、環境に配慮しない製品をつくっていては、消費者から選ばれないでしょうし、非難も免れなくなるでしょう。

そしてわたしたちは「地上資源」といういい方をしている通り、戦争の大きな要因となっている石油などの資源の争奪戦をやめさせて、すべて「地上資源」でまわる世の中にする──つまり、本気で地下資源の争奪がもたらす紛争を止めることを目指しています。

取材当日はあいにくの雨だったが、これ幸いとばかりに再生可能なポリエステル生地を利用した傘を撮影に持ち出した。とにかく明るくエネルギッシュで、ポジティヴである。PHOTOGRAPH BY KAORI NISHIDA

紛争の原因は、自分たちの便利な生活にあることは薄々みんな感じているわけですが、なかなかやめられない。そこに歯止めをかけるんです。メーカーのみならず、小売店も、地下資源=石油でつくられた製品を扱っていれば、いつの日か倫理感を問われても致し方ない時代が来るかもしれない。わたしたちが完成させようとしているのは、こうした消費者参加型で「地上資源」を循環させる社会なんですね。

──受身だった消費者のあり方も、主体的なものに変わってきますね。

だからこそ、消費者の方々には、楽しく参加してもらえればと思います。そして各企業の方も、自分たちの事業のためにこそ、リサイクルに参加することが当然だという空気になっていくことでしょう。そのために、これまでなかったプラットフォームを築き、「0」だった状況を「1」にすることこそが、イノヴェイターに課せられた務めなのだと思います。

金融でもITでもそうですが、既存のプラットフォームの上でサーヴィスを提供するだけでは、そのプラットフォーム自体が揺らいだり、蛇口のように自分たちのサーヴィスの根元をキュッと絞められたりしただけで、何もできなくなってしまいます。そうではない“根幹”のプラットフォームをつくり上げなければならない、だからこそ、みんながワクワクして参加できるように「楽しくやろうぜ!」がモットーなんですよ(笑)

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