グーグルとマイクロソフトが人工知能を強化するのは、「広告でもっと稼ぐ」ためかもしれない

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人工知能のいちばん「金になる」使い道、それはクリック型広告だ。広告検索サイトのオンライン広告収入は、クリック予測精度が0.1パーセント向上するだけで、数億ドルもアップするという。その事実を踏まえて、大手テック起業のAIや機械学習にまつわる動きを分析すると、まったく違った“景色”が見えてきた。

TEXT BY TOM SIMONITE
TRANSLATION BY TOMOKO MUKAI/GALILEO

WIRED(US)

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IMAGE: GETTY IMAGES

グーグルやマイクロソフトが、人工知能(AI)やマシンラーニングへの大規模な投資について自慢するとき、彼らが強調するのは無敵の棋士[日本語記事]や
社交的なおしゃべりロボットといった華々しいアイデアだ。だが、こうした技術の最近の成果のなかで最も収益性が高く、かつ凡庸な用途について彼らは雄弁には語らない。その用途とは、広告収入の促進だ。

自律走行車や共感するロボットは、確実に利益を上げられるものだ。だがそれは実際に市場に出されればの話である。一方で人々のクリック行動をいまよりも少しだけ正確に予測できれば、すぐに大きな富が生まれる。

オンライン広告の多くは、広告がクリックされたときのみ料金が支払われる。つまり、その人に合った広告を出すことは、非常に直接的に利益へとつながるのだ。マイクロソフトのBingチームは最近の論文で、「当社製品における0.1パーセントの精度向上でさえ、数億ドルもの追加の利益を生み出す」と書いている。論文はさらに、測定精度を現在のシステムと比べて0.9パーセント改善させたともしている。

グーグルやマイクロソフトなどのインターネット大手企業は、当然ながら自社の広告ビジネスの詳細について多くは語らない。だが、Bingチームによる論文やグーグルおよびアリババが公表した文献では、広告システムに新たなAIのアイデアを導入するでより多くの利益が得られるという、潜在的な可能性が示されている。それらはすべて、ディープラーニングを利用して広告クリックを予測することの大きなメリットについて説明したものだ。

グーグルが「AIファースト」を強調する理由

グーグルの最高経営責任者(CEO)であるサンダー・ピチャイは、しばしば同社は「AIファースト」だと表現する。しかし、グーグルのバランスシートは間違いなく「広告ファースト」だ。同社の直近の四半期決算での広告売上は227億ドルだが、これはグーグルの親会社・アルファベットの売上の87パーセントに相当する。

グーグルのニューヨークオフィスの研究者たちは8月、広告クリックを予測する新しいディープラーニングシステムに関する研究論文[PDFファイル]を発表した。広告売上の拡大をさらに促進する可能性がある内容だ。

著者たちは、大規模なユーザー基盤を有する企業は「小さな改善」であっても売上を大幅に向上させることが可能であると指摘し、彼らの新しい方法がほかのシステムよりも「大幅に」優れていることを示している。同時にこの技術は、稼動するための演算能力がはるかに少なく済むという。

中国のEコマース企業であり、世界最大級の小売業者であるアリババにも、ディープラーニングで年間の広告収入を数十億ドル増加させることについて考えている人たちがいる。彼らが6月に発表した論文は、ユーザーがクリックしそうな製品広告を予測できる「ディープ・インタレスト・ネットワーク」というシステムについて取り上げた。このシステムは、アリババのサイトを日々利用する数億人のうち一部を抽出した匿名ログで試験運用されている。

アリババの研究者たちは、ディープラーニングの能力は従来の推奨アルゴリズムを上回ると謳う。従来の推奨アルゴリズムは、ユーザーのオンライン生活で何かの変化があると、しくじることがあるのだ。たとえば、若い男性はときに自分の服を買うこともあれば、子供服を購入する場合もある。

最も利益をもたらすAIの使い道

大手テクノロジー企業の広告収入に、ディープラーニングがどのような影響を及ぼすかを知ることは難しい。オンライン広告市場には多くの要因が影響しているし、企業は自らの技術や事業について、すべてを明らかにはしないからだ。

グーグルは長年にわたり、広告収入は安定的に成長していると報告している。またマイクロソフトは、過去5回の四半期決算発表において、Bingの検索広告収入および検索あたりの平均収入が高い伸びを示したと発表した。

グーグルは、最近公開した同社のクリック予測システムが、同社が実際に運用しているシステムにどれほど近いのかについてはコメントを避けた。研究者のガン・フーによると、広告でのマシンラーニングの利用には、さらに多くの可能性があるという。「技術的にまだ難しい問題があります。しかしどんなに小さな進歩でも、多くの企業に大きな影響を及ぼす可能性をもっているのです」と、彼は説明している。

マイクロソフトは『WIRED』US版に対して、同社は広告システムで新しい機械学習技術を試していると語った。マイクロソフトの検索広告マーケティング担当ディレクターを務めるジョン・コスリーは、広告とは「おそらくこの業界において、間違いなく最も利益をもたらすAIおよび機械学習の用途」であると語った。

「広告にみえない広告」へ

広告におけるディープラーニングの利用に関する研究論文は、そうした技術の実際の能力と、それを活用する課題の両方を実際より控えめに示す場合がある。企業秘密が漏れるのを回避するために、発表する内容について慎重に判断しているからだ。

広告プラットフォーム企業のCriteoで研究責任者を務めるスジュ・ラジャンによると、システムを稼働させるエンジニアたちが対処すべき広告の規模は拡大し、求められるスピードも速くなっている。その一方で研究者たちは、エンジニアが直面している問題を単純化して説明する傾向があるのだという(Criteoは、グーグルなどの企業がクリック予測の改善に関する論文に使用した、数百万にのぼる匿名化された広告クリックのログを公開している)。

ラジャンは、ディープラーニングは広告業界により多くをもたらし得ると確信している。例えば、人々がいまオンライン上で見たりしたりすることと、翌週にクリックしたり購入したりするものの間における、長期的な因果関係を解明できる可能性があるのだ。「ディープラーニングを活用すれば、ユーザーによる興味関心のタイムラインを、もっとうまくモデル化できるでしょう」とラジャンは語る。

グーグルとマイクロソフトが人々の欲求を予測する能力は向上しており、クリックはやがてよいものとみなされる可能性がある。両社は現在、「広告にみえない広告」を出すという念願の目標に近づいている。広告主がリーチしたい人々にリーチするのに役立ち、見る側にとっても有用な広告だ。

機械学習は「市場のゆがみ」も拡大するか

オンライン広告企業はまた、消費者やほかの企業の利益にあまり調和しないインセンティヴの影響も受けている。

ハーヴァード・ビジネス・スクール准教授のベンジャミン・エデルマンは、Google検索の結果がグーグル自身のサーヴィスに偏っており、企業がそれぞれのトレードマークのために広告に高額を支払うことを不当に押し付けるよう設計されている、と示唆する研究論文を発表した(前者に関してグーグルは27億ドルの罰金を支払い、後者に関する複数の訴訟に対しては、自らを擁護することに成功している)。

市場を歪めるこうした方法も、機械学習によって促進される可能性がある。「機械学習が正しい相手に適切な広告を表示することによって広告プラットフォームの効率性を改善できるなら、このような企業は価値をつくり出しているのであり、彼らはさらなるパワーを獲得します。ただし、グーグルが行ってきたことの多くは、市場を拡大していません」と、エデルマンは述べている。

ほかの多くの分野と同じように、広告におけるAIは、テクノロジー企業に大きなパワーをもたらす可能性がある。そして責任もだ。

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