Facebookが、巧妙な「政治広告」の規制に頭を悩ませている──ザッカーバーグ、透明性確保へ変心のワケ

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これまでフェイスブックは、「政治広告」の広告主を開示するよう求める規制に反対の立場だったが、その考えを改めたようだ。背景には、プラットフォームとして巨大化しすぎたFacebookを政治に利用しようとする勢力の存在があった。

TEXT BY ISSIE LAPOWSKY
TRANSLATION BY SATOMI FUJIWARA, HIROKO GOHARA/GALILEO

WIRED NEWS(US)

PHOTO: ANDREW POWELL/GETTY IMAGES

フェイスブックは2011年、あることを米連邦選挙委員会(FEC)に願い出た。政治広告を出した広告主の身元を明らかにするよう求める規制について、適用の免除を求めたのだ。

テレビやラジオの政治広告では、広告主の情報公開が義務づけられている。だがフェイスブックは、Facebook上での広告はクルマのバンパーに貼る標語ステッカーと同じで、「小規模なアイテム」として扱われるべきだと主張したのだ。

こうしたステッカーなら情報公開は必要ない。だが、この問題を巡る連邦選挙委員会での議論は行き詰まり、デジタル広告をどう扱うべきかという疑問は6年にわたって放置されてきた。

いま、その議論が再び盛り上がろうとしている。しかもその過程では、フェイスブックが損害を被る可能性も出てきたのだ。

問題が再燃した理由

この問題への関心が再燃したのは、2017年9月初めのことだ。16年の米大統領選挙の期間中に、ロシアのトロール(荒らし)アカウントにリンクされた政治広告によって、フェイスブックが15万ドル相当の売り上げを得ていたことが明らかになったのである。

捜査当局からの圧力を受けたフェイスブックは、米国議会と特別検察官ロバート・ミュラー三世に対してこの広告に関する記録を提出している。議会内には、この売上についてフェイスブック幹部の証人喚問を求める声もある。

フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバークは9月21日(米国時間)、この論争を鎮めようとして、透明性に関する新しい対策を発表した。Facebookに掲載される政治広告の広告主に身元を明らかにするよう要求することと、ターゲットとなるFacebookユーザーごとに異なる広告の内容について、そのリストを公にカタログ化するという内容だ。これに対して議会は、そうした情報公開を義務づける法案を検討している。

デジタルの政治広告に新たな基準を設けるというのは、前例のない動きだ。しかし、そうした基準ができても、米国の政治広告規制システムは複雑で抜け穴だらけなので、悪用を防止できはしないだろう。

政治広告のグレーゾーン

例えばこういう事例がある。2016年の大統領選挙直前、悪名高き極右のインターネットトロールであるチャック・ジョンソンが運営するクラウドファンディングサイト「WeSearchr」が5,000ドルを超える資金を集め、ある看板を激戦州のペンシルヴァニアで掲げた。この看板には、「米国国境」と読める文字が書かれた、キラキラと輝く新しい黄色い煉瓦の壁の絵が描かれていた。

それはドナルド・トランプの格好をした2人の「カエルのペペ」(オルタナ右翼のシンボル)が夜に壁を護衛し、壁を超えようとする人間がいないか警戒しながら銃を構えているというイラストだった。サングラスをかけて微笑む三日月の横には、「Don…(「ボス」とDonaldのひっかけ)が現れる前には、いつでも闇が最も深くなる」という不吉なキャプションが書かれていた。

この看板は、匿名の者たちからの資金でつくられたわけだが、看板自体に資金提供者に関する情報は何ひとつ書かれていなかった。選挙活動法務センター(Campaign Legal Center)の連邦選挙委員会改革担当責任者であるブレンダン・フィッシャーは、「これは選挙資金法の規定範囲には入らないでしょう」と述べる。「何かを明白に主張しているわけではありませんし、特定の候補者への投票呼びかけや批判を行っているわけでもないですから」

つまり、カエルのぺぺが描かれた看板は、トランプ候補陣営が購入したものではないし、大統領選をあからさまに謳うものでもなかったので、支持者たちには身元を明かす義務はなかったということだ。

これと同じ法的なグレーゾーンがFacebookにも当てはまるだろうが、そのスケールは遙かに大きく、しかも危険を含んでいる。Facebook上では、ほとんどの広告がアルゴリズムで販売されており、WeSearchrのスタッフは数分で何千ものデジタル広告枠を買うことができる。

この事実は、フェイスブックにとっても規制当局にとっても、問題を非常に厄介にする。ヴァージニア大学の「メディアと市民のためのセンター」(Center for Media and Citizenship)でディレクターを務めるシヴァ・ヴェイドヒャナサンは、「フェイスブックはとてつもなく巨大で、われわれの管理能力を超えています」と語る。

ヴェイドヒャナサンは現在、フェイスブックをテーマにした本を執筆している。彼はザッカーバーグが発表した改革案も、議会が検討しようとしている法案も、選挙期間中にロシアのトロールが広告を買うことを阻止できないだろうと述べる。

フェイスブック側の主張では、ロシアの広告は(カエルのぺぺの看板と同じく)候補者の名前も、選挙のことも明言していなかった。さまざまな問題のなかで、特に移民や性的少数派(LGBT)の権利、銃に関する社会問題に焦点を当てただけの広告だったという。フェイスブックが広告主の身元開示を要求する対象が、公式な選挙活動団体、あるいは政治行動委員会だけならば、ロシアにリンクされた広告は目立たないように上手くやり抜けるだろう。

巨大化しすぎたFacebook

議会で検討されている法案についても同じことが言える。法案では、ユーザーが100万人を超えるデジタルプラットフォームに対して、オンライン政治広告に1万ドル以上を支出した人が購入した「選挙運動的なコミュニケーション」を公に記録するよう義務づけようとしている。

連邦選挙委員会は「選挙運動的なコミュニケーション」について、「連邦の候補者に言及し、米国の有権者をターゲットにし、予備選挙の30日前または一般選挙の60日前までに現れる」広告と定義している。ここでもまた、ロシアの広告はテストに合格してしまうだろう。支出の最低ラインが1万ドルに設定されているので、複数のFacebookページを開設し、9,999ドルで広告を購入して広報活動を行い、気づかれずにいることも可能なのだ。

フェイスブックが「政治広告の定義」を劇的に拡大する、あるいは議会がFacebookに掲載される政治広告に使われる費用をすべて漏らさず追跡するとしても、これを回避する方法はいくらでもある。例えば、誰かがフェイクニュースのウェブサイトをつくり、そこの「ニュース」記事を多くの人に読ませるための広告を出すこともできる。

選挙活動法務センターのフィッシャーは、「フェイスブックのような企業や政府が、誰がメディアであり誰がメディアではないのかを定義したり、その規制や制限を考えたりすることは、一般的に嫌われる傾向があります。これは難しい問題です」と言う。フェイスブックはこの問題を、フェイクニュースや人を惑わす内容の投稿をユーザーにマークさせたり、そうした投稿を繰り返しシェアしているアカウントを禁止したりすることで解決しようとしている。それでも、アカウントが禁止されるには、誤解を招きかねない情報の拡散という被害がすでに発生していなければならない。

ザッカーバーグは9月21日に、フェイスブックがシステムの悪用をすべて捕捉できると期待するのは「現実的ではない」と語った理由もここにある。同氏は運命論者ではないし、怠け者でもない。ただ、正直に話したまでだ。もっとも、少し利己的ではあるが。

ヴェイドヒャナサンはこう語る。「ザッカーバークは実験室で怪物をつくり出したようなものです。その怪物は、自身が予想しなかった大きさに成長してしまいました。Facebookは巨大すぎて、適切に介入することができないのです」

戦い続けることの重要性

それでも、自主規制しようとするフェイスブックの努力は、少なくとも政治家自身の選挙広告に関しては従来以上の透明性をもたらすだろう。フェイスブックは11年、デジタル広告に透明性をもたらそうとする選挙管理委員会の取り組みを邪魔する存在だった。だが今回、この問題を再び議論する上で、フェイスブックは選挙管理委員会とともに前進への道筋を描いてくれるだろうと、選挙活動法務センターのフィッシャーは期待している。

「もちろん抜け穴は残ります。外国の勢力が米国の選挙に影響を及ぼそうとする動きはなくならないでしょう。それは米国内の億万長者が、国内政治や世論を動かそうとする行為がなくならないのと同じです」とフィッシャーは言う。「けれどもそれは、この問題を解決するための戦いには価値がない、という意味ではありません」

規制する側と擁護する側が戦い続けることが重要なのだ。フェイスブックにとっては、(法的な規制を受けるのではなく)自身で管理や監視ができる状態が望ましい。しかし、歴史が何らかの指標になるとすれば、フェイスブックにはいくらかの導きが必要だろう。

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