絶滅と考えられていた孤島の昆虫、DNA判定で再発見される【閲覧注意】

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オーストラリア東岸沖の島で1918年に絶滅した固有のナナフシが、20kmほど離れた島で2001年に発見された。外観が異なり同種かどうかに疑問がもたれていたが、このほど沖縄科学技術大学院大学などのDNA鑑定で同一種とわかり、元の島に戻される計画だ(閲覧注意。虫画像あり)。

TEXT BY MATT SIMON
TRANSLATION BY MAYUMI HIRAI, HIROKO GOHARA/GALILEO

WIRED(US)

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一般的なナナフシのイメージ。IMAGE:DE AGOSTINI PICTURE LIBRARY/GETTY IMAGES

オーストラリア東岸沖約600kmに、地球上で最も奇妙なかたちをした島がある。太平洋の海中から突き出しているボールズ・ピラミッド(Ball’s Pyramid)だ。

名前の通り、やせ細ったピラミッドのようなかたち(島の幅は最高で1,000m、最高地点の標高は562m)をしている。元々は楯状火山の一部だが、映画に出てくる悪者の隠れ家にぴったりの雰囲気を醸し出している。

その垂直に近い断崖を2003年に調査隊がよじ登り、この島以上に奇妙なかたちをした唯一のものを捜索した。ロードハウナナフシと呼ばれる昆虫だ。

非常に大きく、体長15cmほどに成長し、黒くて頑丈な腹部と太い後脚をもっている。研究者たちは非常に苦労した末に、繁殖可能なオスとメスを2組だけ採集した。ロードハウナナフシは、地球上で最も希少な昆虫とされていたからだ。その状況は現在も変わらない。

100年前、この巨大なロードハウナナフシは、ボールズ・ピラミッドから20kmほど離れたロード・ハウ島で普通に生息していた。太古の火山が海水に浸食されてできた三日月形の島だ(面積は15平方キロメートルで、350人の住民が住む)。

しかしロードハウナナフシは、侵略性のあるクマネズミの予期しない上陸(難破船に潜んでいたものと見られる)によって、1918年に全滅したと考えられていた。ところが2001年、ボールズ・ピラミッドでロードハウナナフシがごくわずか生息していることを、科学者による調査隊が発見した。ただし、何かが違っていた。

博物館の標本と実物をDNA鑑定した結果

ロード・ハウ島のロードハウナナフシは、ボールズ・ピラミッドで採集されたものよりも全体的にかなり太くがっしりしていて、オスの脚のとげが大きかった。あまりにも違いが大きいため、これは新天地を見つけたロードハウナナフシなのか、あるいはまったく異なる種類なのかという疑問が生まれた。

その答えを見つけるには、採集したロードハウナナフシから生まれた子どものDNAを、ロード・ハウ島の博物館に収蔵されている標本と比較する必要があった。しかし、こうした標本のDNAは時間とともに劣化しやすく、配列決定(シークエンシング)の妨げになる。2000年代初めの当時、それを行える技術はまだ存在しなかった。

しかし、いまは違う。『Current Biology』誌オンライン版に2017年10月5日付けで発表された論文によると、これら2種類のロードハウナナフシのゲノム比較に成功。外観はかなり異なるものの、DNAの相違は実際には1パーセント未満であることを確認したという。つまり彼らは、住みにくいピラミッド形の島に遊びに行ったロードハウナナフシだったというわけだ。

研究者たちは、ロード・ハウ島の博物館標本同士でも比較を行い、相違が約0.5パーセントであることを突き止めた。「つまり、島内での相違は、ロード・ハウ島とボールズ・ピラミッドとの間の相違と基本的に同じ大きさだということです」と、論文の筆頭著者である、沖縄科学技術大学院大学のアレキサンダー・ミケェエヴ准教授は説明する。

「種の定義」にDNA検査が果たす役割

ナナフシの名前なんてどうでもいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、この研究は、種とは何かという考え方そのものに対して大きな意味がある。

ボールズ・ピラミッドに生息するロードハウナナフシが、ロード・ハウ島で絶滅したものとかなり異なる外観をもつ理由は、引き続き謎のままだ。脚の大きなトゲは、メスの争奪戦などに使われていたのかもしれない。また、そもそもロードハウナナフシがいつ、どのようにしてボールズ・ピラミッドに渡ったのかも不明だ。遺伝子検査が進めば、これらの個体群が微妙な分岐を始めた時期を特定できるかもしれない。

とにかく科学的には、これらは同じ種だとされる。問題は、厳密な種の定義について、そもそも科学者たちがなかなか同意できていない点にある。クモやサソリの研究が専門で、今回の調査には参加していないカリフォルニア科学アカデミーのローレン・エスポージト博士は、種の概念自体が定まっていないことに関して、「わたしが最後に確認したとき、文献に発表されたり、実際に使用されたりしている種の概念は53近くありました」と説明する。

多少の違いはあれ、これまでの定義では、種とは互いに繁殖が可能な動物の集まりだった。しかし、異なる種同士が子孫を残すことができることを考えると問題が生じてくる。

メスのウマとオスのロバの交雑種であるラバがその例だ。ただし、ラバは不妊だ。それなら種とは、繁殖力のある子孫を産み育てることができる動物の集まりであるとは言えないだろうか。いや、違う。ホッキョクグマとハイイログマの雑種には繁殖力がある。このように、種の定義は難しいのだ。

しかし現在では、遺伝子検査能力の向上により、種であることの意味が正確に定量化されるようになった。もはや生物学者が、それぞれの個体に共通する特徴がないかを入念に観察したり、繁殖力があるかを確認したりする必要はない。今回の調査でも、博物館の標本と、その壊れやすいDNAが、重要な役割を果たすことになった。

エスポージト博士は次のように述べる。「博物館の科学者たちにとって幸運なことに、新たに登場してくる手法の多くが、非常に短いDNAの一片のシークエンシングを行うものです。(この研究は)歴史博物館に資料を保存しておくことの価値と、その資料が将来に予期しない重要性をどのようにもたらす可能性があるのかを、わたしにはっきりと示してくれました」

ロード・ハウ島の復興計画に影響も

今回の研究により、ロード・ハウ島の復興計画が変更される可能性もある。有害なクマネズミがまだ生息しているが、オーストラリア政府は、2018年に大規模な根絶対策を実施し、侵略性のあるネズミ類を最後の1匹に至るまで島から一掃する計画だ。

ネズミが一掃されたら、2001年にボールズ・ピラミッドで採集されたナナフシの子孫たちをロード・ハウ島に連れ戻す計画がある。現在のロードハウナナフシは、本来のものとはたしかに外観は異なるが、遺伝子上はほとんど見分けがつかない。つまり、ロード・ハウ島を再び住処とするのにふさわしいという可能性はある。

沖縄科学技術大学院大学のミケェエヴ准教授は次のように話している。

「ロードハウナナフシの物語は、島の壊れやすい生息環境が、人間がもち込んだ侵略的な種によって破壊されたという喪失の物語です。しかし実を言うとロードハウナナフシは、わたしたちにも何かができると声に出せるような機会を与えてくれます。わたしたちはこの環境に対して途方もなく大きな損害を与えてきましたが、環境をさらによくなるように元に戻すために、先を見越してできることがあります。それがどのようなものかは明確に示されないかもしれませんが、その方向に一歩進むことはできます」

晴れて正式に認められたロードハウナナフシを歓迎しよう。近い将来には、ふるさとに帰ってきたナナフシたちに、「おかえり」と言うこともできるかもしれない。

左は、ロード・ハウ島に生息していたが絶滅したロードハウナナフシのオス。右は、20km離れた島であるボールズ・ピラミッドで再発見されたロードハウナナフシのオス。外見はかなり異なる。IMAGE COURTESY OF MIKHEYEV ET AL./WIKIMEDIA COMMONS

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