その自律走行車は、人ではなく「荷物」を運んでやってくる──無人の「宅配専用車」が抱える課題と可能性

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宅配に特化した無人の自律走行車を、シリコンヴァレーのスタートアップが完成させた。だが実用化には、人間による運転が前提である法律の改正など、課題は山積している。宅配を根本から変える実力を秘めたクルマの、その可能性を紹介する。

TEXT BY ALEX DAVIES
EDITED BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

NuroSelfDriving

PHOTOGRAPH COURTESY OF NURO

近所の道路で自律走行車を見かける日も近いだろうという予想の最も確かな根拠は、この業界ではスタートアップブームがひと段落したという事実だ。自動運転の実現を目指す新興企業は、ほぼすべてが事業の拡大に不可欠な生産能力を手に入れるために自動車大手と手を組むことを決めている。

Argo AIはフォード、Cruiseはゼネラルモーターズ(GM)、ウェイモ(Waymo)はフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、Auroraはフォルクスワーゲンおよび現代自動車といった具合だ。こうした段階で自動運転の世界に参入したヴェンチャー企業は、LiDARやミリ波レーダーといったセンシング技術の向上、地図データの圧縮など、ニッチな分野に注力している。

シリコンヴァレーのスタートアップのNuroは、この両者の中間に位置する企業だ。ロボットカー産業を牛耳ろうとしているわけでないが、部品メーカーの座に甘んじる気もない。

Nuroは独自の自動運転システムをゼロから開発した。しかし、競合他社がライドシェア、トラック輸送、デリヴァリーなどよそ見をする一方で、Nuroは方向を見失わなかった。

目指すは「宅配専用」の自律走行システム

秘密のヴェールを脱いだいま、同社は9,200万ドル(約101億円)の資金を集め、宅配事業というゴールに向かって突き進んでいる。配達に使われる(とてもひどい事態が起こらない限りは)ドライヴァーを必要としないクルマも完成した。

そのクルマを外から見守るのは、素晴らしい経歴を持つエンジニアたちだ。共同創業者のデイヴ・ファーガソンは。カーネギーメロン大学のロボット研究所からキャリアを始め、2007年に行われた米国防高等研究計画局(DARPA)主催のロボットカーレース「アーバンチャレンジ」では優勝した車両の開発に関わった。

そして11年、いまではWaymoの名で知られるグーグルの自律走行車プロジェクトに加わっている。もうひとりの共同創業者である朱佳俊(チュウ・ジャジュン)は同プロジェクトの創設メンバーで、2人は16年半ばに何か新しいことをやろうとグーグルを退社した。

なお、この時期には多くの人材がグーグルを離れている。プロジェクトの技術トップだったクリス・アームソンは辞めてAuroraを設立したほか、数ヶ月前にはやはり創設メンバーのアンソニー・レヴァンドウスキーがOtto(創業直後にUberが買収)を立ち上げるために辞職している。レヴァンドウスキーを巡っては、離職時に機密情報を不正に持ち出したとの疑いからグーグルとUberの訴訟に発展した。

ファーガソンによると、宅配をやると決めたのには3つの理由がある。まず、さまざな人に届くサーヴィスであること。次に、技術的なやりがいと持続可能なビジネスモデルを与えてくれること。そして、3〜5年で実用化が可能なことだ。

立ち上げから1年で専用の無人車両ができあがった。それが今回お披露目された「R-1」だ。車高は普通のセダンと同じくらいだが、車幅は半分程度で、全長はコンパクトカーの「スマート」とそれほど変わらない。

そして、自動運転で通常使われるセンシング機器(カメラ、レーダー、ルーフトップに設置した回転式のLiDAR)を使って走る。完全な電気自動車(EV)の車体にはコンパートメントが2つあり、日用品から花、ビザまで、お金を払って運んでもらいたいものは何でも入れることができる。見た目はピクニック用のバスケットとトースターと、『スター・ウォーズ』に出てくる修理ドロイド「MSE-6」を足して3で割ったような感じだ。

しかし、やるべきことはまだたくさんある。例えば、人間を乗せるためではないクルマを認めるよう規制当局を説得しなければならない(現行の規制では、すべての自動車にはシートベルトやエアバッグといった装備が義務付けられている)。また、特定のレストランなどと契約するにしても、商品を配送センターから届け先まで運ぶ「ラストワンマイル」に挑戦するにしても、利益の上がるビジネスモデルを構築することが必要だ。

GMやWaymo、Uberなどが人間を運ぶための無人運転車の開発を進めるなか、Nuroは大企業の傘下に入ることなく自力で戦えるだけの力を手に入れるまでは少なくともやっていけそうな、ニッチな分野を見つけたということになる。

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