平昌冬季オリンピックは、空前の「ライヴ五輪」になる──米テレビ局が本気で挑む「SNS戦略」の中身

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平昌冬季オリンピックは、あらゆる競技の情報や映像がリアルタイムで飛び交うソーシャルメディア時代ならではの五輪になる。重要な役割を果たすのが、米大手テレビネットワークのNBCだ。放送権料に数十億ドル単位の金をつぎ込んだNBCは、いかにSNSを活用しようと考えているのか。その本気の施策に迫った。

TEXT BY ANGELA WATERCUTTER
EDITED BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

freestyle skier

PHOTO: STEVE RUSSELL/TORONTO STAR/GETTY IMAGES

韓国で開かれている平昌冬期オリンピックは、史上最も“ライヴ感”のある冬季五輪になるだろう。まず、フィギュアスケートやスノーボードのような看板競技は、アメリカとの時差を考慮した時間枠で行われる。さらに米3大テレビネットワークの一翼を担うNBCは、全競技をライヴで放送する計画だ。

すべて生中継なのでタイムラグはない。NBCのスタッフがリアルタイムでソーシャルメディア(SNS)に投稿する情報が、高画質な動画とともに流れてくることは間違いないだろう。

ロシアで行われた2014年のソチ冬季五輪と、16年夏にブラジルで開かれたリオデジャネイロ五輪の間のわずか2年で、SNSにおける動画の重要性は驚くほどの勢いで増していった。NBCでオリンピック担当部門を率いるゲイリー・ゼンケルは、「リオ五輪では、編集された短めの動画が長時間コンテンツの視聴を促すという多くの調査結果が出ています」と語る。

ゼンケルは、リオ五輪から現在までの1年半でソーシャルメディアの世界は大きく変化した、とも付け加える。「前回大会でやれなかったことのうち、今回ならできることについてあれこれ考えています。見送った企画ではなく、やりたかったのに当時は不可能だった企画についてです」

NBCが全力で動画に取り組む理由

そして、数字は嘘をつかない。リオ大会では「#Rio2016」というハッシュタグのツイートが1億8700万もあり、それらが合計で750億回(750「億」回だ)も読まれた。Facebookでのインタラクション数は15億回に達し、NBCのリオ五輪の特設ページだけでも6億回を超える動画の視聴があった。Snapchatでは3,500万人が22億個のスナップを閲覧している。時間に換算すると、2億3000万分を超える計算だ。

平昌大会でこうした記録が塗り替えられるのは間違いない。だからこそ、NBCは全力を挙げて取り組んでいるのだ。Facebookではさまざまな動画を流し、TwitterやYouTube、そしてSnapchatにも投稿する。結果として得られるものはもちろん広告収入だが、同時にネット上で話題になるだろう。それがNBCにとってのメリットになる。

なにしろ、NBCは大会の放送権料に数十億ドル単位の金をつぎ込んでいる。ソーシャルメディアからその一部を回収しなければ、これまでの投資に対するリターンを最大化できないだろう。

SNSでハイライト動画を見せることでテレビ離れが進むとの分析もある(リオ大会のゴールデンタイムのテレビ視聴回数は2,750万回と、前回ロンドン大会の3,030万回から9パーセント減少した)。だが、この見解にゼンケルは懐疑的だ。五輪の特設サイトや「NBC Sport」といったアプリでストリーミング放送を見ているだけでも、視聴者の関心は高まるとみている。

SNSでの存在感を高めることは、五輪中継を巡って視聴者の不満が高まったときの“対抗策”にもなる。「Twitterオリンピック」とまで呼ばれたロンドン大会では、「#NBCFail」というハッシュタグの下でNBCへの不満が巻き起こる事件があった。これは、アメリカでの開会式の独占放映権をもっていたNBCが、視聴率を意識して式典の放送をアメリカでのゴールデンタイムにずらし、ライヴ中継ではなくて録画放送したことに対する怒りの表れだった。

SNSによる「ネタバレ」という新たな課題

ゼンケルは今回の大会について、NBCのSNSチームが利用者の要望や不満への対応に多くの時間を割くことは難しいとみているが、「とにかく前に進まなければならない」という。そして大量のコンテンツを絶え間なく発信し続けることが、放送内容についての不満を減らすことにつながるとみている。

それでも、鍵を握るのは生中継の戦略だろう。ロンドン大会やほかの五輪関連イヴェント中の苦情の多くは、録画放送による時間差やコマーシャルによる放送の中断に関するものだった。無理のない範囲ですべてを生中継すれば、視聴者の怒りを鎮めることができる。

これに関しては、韓国とアメリカ(東部標準時)との時差が14時間であることも有利に働く。フィギュアやアイススケートといった競技は現地時間で午前中に日程が組まれており、アメリカではちょうどゴールデンタイムに当たる。ゼンケルは、競技の動画や結果はリアルタイムでソーシャルメディアに流れ、誰もが「大事な瞬間」を共有できるのだと説明する。

だが、疑問も生じる。すべてがライヴ中継され、ストリーミングで流され、SNSにもリアルタイムで投稿されるのであれば、お気に入りの競技は録画してあとでゆっくり見よう──と考えている人たちにとっては困ったことになる。TwitterやFacebookで結果を知ってしまい、せっかくの楽しみが台無しになりかねない。残念ながら、ほぼ確実にそうなるだろう。それがインターネットの時代に、わたしたちが支払う代償なのだ。

ゼンケルは「“ネタバレ注意”の時代は終わったのです」と言う。「人々は最高の瞬間を目撃したいと思っているはずです。何か素晴らしいことが起こったという事実を隠す理由はありません」

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