「モデル3」の量産に苦しむテスラ、目標達成に向けた「生産地獄」の実態

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テスラが「手の届く」価格の電気自動車EV)として投入した「モデル3」の生産が、遅れに遅れている。四半期ベースで過去最高となった赤字が拡大する可能性すらあるといい、今後も山積する課題の解決に向けたキャッシュアウトが続くばかりだ。イーロン・マスクの前に立ちはだかる「生産地獄」は、いまどんな状況にあるのか。

TEXT BY JACK STEWART
EDITED BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

Model3

PHOTOGRAPH COURTESY OF TESLA

真紅の「ロードスター」を載せた大型ロケットの打ち上げを成功させたわずか27時間後、イーロン・マスクはその視線を赤い惑星から「青い惑星」に向けた。この星でマスクは、別のプロジェクトを軌道に乗せようとしているのだ。

マスクは2月7日に行われたテスラの決算発表で、「ロードスターを周回軌道に送り込むことができたのですから、『モデル3』の生産の遅れも解決できます」と語った。「あとは単に時間の問題です」

ひと握りの投資家と40万人以上いるモデル3の購入予約客が知りたいのは、それは具体的にどのくらいの時間なのか、ということだ。

35,000ドル(約372万円)のモデル3は電気自動車(EV)の普及を後押しするはずで、テスラが大手メーカーの仲間入りをするために極めて重要な意味をもつ。同社の2017年第4四半期の業績は6億7,500万ドルの赤字に沈んでおり、赤字幅は四半期ベースで過去最大となるだけでなく、今年も拡大する可能性があるという。

投資を増やしても、効果はすぐには現れないだろう。新しいモデルを商業生産するのは容易ではない。グローバルなサプライチェーン、組み立てラインや塗装ライン、品質管理システム、そしてそのほか無数の細かなことが、スイッチを入れるだけで動き出すというわけにはいかないのだ。

自動車の組み立てには必須の(そしてマスクが愛する)ロボットは調整を行う必要があり、工作機械やワークフローのテストもしなければならない。試行錯誤というフェーズが必要なのである。

ボトルネックはバッテリー工場にあり

テスラにとって今回の課題は特に難しい。マスクは当初、17年末までには生産が軌道に乗り、週5,000台を組み立てられるだろうと宣言していたが、見通しは今年3月に先送りされた。そして現時点での目標は6月だ。第4四半期のモデル3の納車台数は1,500台にとどまっている。

問題はカリフォルニア州フリーモントの組み立て工場ではなく、バッテリーを製造するネバダ州のギガファクトリーにあるのだという。マスクは投資家たちに「モジュール生産がネックになっています。皮肉なことに、わたしたちが最も得意とするやり方です」と説明する。テスラは「モデルS」やSUV「モデルX」のより大型で高価なバッテリーで、経験を積んできたはずだった。

外部のサプライヤーが設計したシステムが機能しなくなってからは、機械間の部品の移動は人力で行うことを余儀なくされている。マスクが思い描いていたような、暗闇で完璧なクルマを吐き出す「大型の宇宙船」とは多少異なるが、スタッフが生産速度を上げるために必要なスキルを習得する早さには感銘を受けたという。彼は「人類への信頼を新たにしました」と冗談を言っている。

最高技術責任者(CTO)のJB・ストローベルは、「完全自動化のシステムを設計し直して、ギャップを埋めているところです」と話す。3月には、2016年に買収したドイツのグローマン・エンジニアリングの機械がギガファクトリーに到着する予定という。

モデル3の初期評価は非常に高かった。テスラ車としては最も低価格だが、同社のDNA、加速性能、そしておそらくは必要以上のテクノロジーが、タッチスクリーンひとつにまとまっている。キーレスエントリー(施錠とクルマの始動にはスマートフォンを使う)などの機能も未来的で、テスラにはぴったりだ。

初期ロットのモデル3は、テスラやスペースXの従業員の手に渡った。彼らは車の代金を支払うが、同時に走行テストのネットワークとしての役割も果たす。しかし、一般消費者への納車が始まったいま、より大きな問題がもち上がっている。

初期ロットの品質に関するよくない評判

エンジニアリングコンサルティングのムンロ&アソシエイツはモデル3の分解調査を行い、構造的な品質は1990年代の起亜自動車に近いと酷評した。これはまずいだろう。

サスペンションが硬く乗り心地が悪いと不満を漏らす購入者もいるほか、サーヴィスセンターに相談したところ、理由を知らされないまま電源システムの部品を交換するよう言われたという事例も複数報告されている。どちらもリコールには至っていないが、ディーラーでは別の理由でクルマがもち込まれても部品交換を行なっているという。

それでもなお、「手の届く」価格のテスラを手に入れるために1,000ドルの予約金(日本では15万円)を払って、ウェイティングリストに名を連ねた顧客がたくさんいる。販売店に実物が展示されるようになったいま、リストは長くなる一方だ。

しかし、本当に3万5,000ドルで済むのかも怪しくなってきた。テスラはモデル3の長距離バッテリーモデル(航続可能距離は310マイルだ)の生産にも着手しており、こちらは内装のアップグレードなどのオプションを付けた場合、価格は5万ドル近くに跳ね上がる。3万5,000ドルの標準バッテーリモデルについては、販売開始は(それがいつを意味するにしても)「2018年の初頭」となっている。

テスラの将来は、モデル3の効率的な生産が実現するかにかかっている。利益を出すためにはすべての問題をすぐに解決し、ハイテクを駆使した製造ラインで高品質のクルマをどんどん組み立てて、消費者の手に届けなければならない。そうすればキャッシュフローが順調になり、これまでに出した巨額の損失も多少は埋め合わせることができるだろう。そして、テスラなら「誰にでも手が届く価格のEV」という大きな約束を果たせると、投資家たちに納得させられる。

それがひと段落したら、次は自動運転だ。マスクは以前、17年末までにテスラ車を使って完全自動運転でアメリカ横断をしてみせると約束したが、こちらの期限も守ることができなかった。ほかにも完全電動セミトレーラー(大型牽引トラック)「セミ」の生産や、11月に公表したF1カーより速い新型「ロードスター」も待っている。

しかし、いまはとにかくモデル3に集中しよう。自動車生産はロケットを飛ばすこととは違うし、それよりはるかに難しいのだ。

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