「ロボネコヤマト」の実証実験から、自動運転時代の「新しい宅配」のかたちが見えた

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自動運転技術が進化していったとき、荷物の宅配はどのような姿になっているのか。ヤマト運輸が取り組む「ロボネコヤマト」の試験サーヴィスから見えてきたのは、荷物を受け取る側の意識変革まで促そうとする「新しい宅配のあり方」だった。(雑誌『WIRED』日本版 VOL.30別冊「Future Mobility」より転載)

TEXT BY DAISUKE TAKIMOTO

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ロボネコヤマトの配送車内に置かれた宅配ボックスのようなロッカーを開けると、中に荷物が入っている。これを取り出して扉を閉めれば、受け取りは完了する。近隣の商店の商品を専用サイトで購入すれば、それもロッカーで受け取れる。PHOTOGRAPH BY DAIZABURO NAGASHIMA

ネット通販の急速な浸透による荷物の急増とドライヴァー不足が、宅配事業者にとって死活問題になっている。再配達や即日配送の嵐に耐えきれなくなり、配送料を値上げする動きも顕在化した。しかも今後はドライヴァーの高齢化が予想され、これまでと同じように重い荷物を抱えて街を駆け回ることはできなくなるだろう。こうした問題をどう解決していくのか。最大手のヤマト運輸が導き出した答えが、宅配の自動化だった。

神奈川県藤沢市の新興住宅地。目の前に停まったミニヴァンの扉を開けると、中には宅配ボックスのような黄色いロッカーが鎮座していた。スマートフォンに表示させた二次元バーコードを読み取り機にかざすと、ロッカーの扉が開く。そこから荷物を取り出せば、宅配の受け取りは完了となる。

ロボネコのドライヴァーは「運転するだけ」

ヤマトが藤沢市で行っている次世代宅配便サーヴィス「ロボネコヤマト」の実証実験は、これまでの宅配便とは大きく異なる点がいくつかある。まず、ドライヴァーが荷物を手渡すのではなく、利用者が自分で受け取りの手続きをすること。ロボネコヤマトの配送車にはドライヴァーが乗っているが、原則として運転する役割に徹している。というのも、将来は自律走行車による運用を想定しており、受け取る作業をどこまで利用者任せにできるかテストしているからだ。

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次世代宅配便サービス「ロボネコヤマト」の実証実験車両。荷室には宅配ロッカーが設置してある。ユーザーが二次元バーコードを読み取り機にかざすと、荷物の入ったロッカーが開く仕組みだ。将来的には自律走行で運用することを想定しているが、現時点ではドライヴァーが運転して移動する。PHOTOGRAPH BY DAIZABURO NAGASHIMA

そしてもうひとつ、利用者のほうからクルマまで足を運ぶところが、これまでの宅配の常識と異なる。事前にスマートフォンで受け取り場所と時間を設定しておき、そこにやってきた配送車まで利用者が受け取りに行く。場所の指定は屋外なら自由で、時間は10分刻みで指定できるなど自由度が高い。極端なことをいえば、帰宅や散歩などの道すがらに荷物を受け取ることもできる。

これまでの宅配は玄関先まで来てくれる代わりに、受取時間に数時間の幅があった。ロボネコヤマトは玄関先からほんの少し外に出る手間と引き替えに、受取時間の自由度が高まる。ヤマト運輸の情報ネットワーク戦略課長である畠山和生は、「荷物を利用者が引き取る新しい文化の醸成にもつながります」と語る。すなわち、荷物の受け取り方の変化を利用者が受け入れられるか確かめる、社会実験という側面もある。

さらに、宅配の付加価値を高めるサーヴィスも用意された。近隣商店での買い物を代行する「ロボネコストア」だ。利用者が専用サイトで地元の食品スーパーやドラッグストアなどの商品を購入すると、ロボネコヤマトの配送車が店舗を回って商品をピックアップし、指定場所に届けてくれる。受け取りは荷物と同じようにロッカーを使う。いわば、宅配トラックが「動くコンビニ」のようになるわけだ。

一連のサーヴィスを支えるのが、人工知能を利用した車両運行システム。宅配ドライヴァーのノウハウを取り入れながらDeNAが開発したもので、道路の混雑状況や受け取りの需要予測などを考慮しながら配送ルートなどの計画を立てる。「ドライヴァーは計画に沿って運転すればいいだけなので、高齢者や女性の雇用にもつながります」と、DeNAロボットロジスティクスグループのグループマネジャー、田中慎也は説明する。

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スマートフォンに表示された二次元バーコードを読み取り機にかざすだけと、操作は簡単。ディスプレイには操作方法が表示される。PHOTOGRAPH BY DAIZABURO NAGASHIMA

ヤマトとDeNAは2017年度中をめどに、ロボネコヤマトに自律走行車を投入するという。だが、住宅地のなかを走らせるのは20年代半ばくらいになる見通しだ。実現すれば、配送車から玄関先までのラストワンマイルを除いて、かなりの部分が自動化されることになる。

ラストワンマイルの行方

玄関先までのラストワンマイルは、今後どうなっていくのか。ロボネコヤマトでは利用者がクルマまで足を運ぶ“歩み寄り”で解決したが、最終的にはここも自動化されるとみていい。主役に躍り出る可能性が高いのは、宅配ロボットだ。

エストニアのスターシップテクノロジーズが開発した6輪の自律走行ロボットが、その先駆けといえる。これまでに世界各国で宅配サーヴィスの実証実験を重ねており、今年に入ってドミノ・ピザがドイツのハンブルクで宅配サーヴィスに導入した。国内では17年10月から六本木ヒルズで、ZMPが自走式ロボットによる実証実験を行っている。今後さらに自律走行の精度が向上して安全が実証されるようになれば、オフィスビルなどの限られた区域に限定して早い時期に実用化される可能性がありそうだ。

こうしたロボットの“母艦”となるトラックのプロトタイプも、すでに発表されている。ダイムラーが17年1月に発表したヴァンタイプの配送車は、荷物と一緒に宅配ロボットを積み込んだり、屋根にドローンが発着できたりする。いまはドライヴァーが運転することが前提だが、将来的に自律走行が想定されている。

実現すれば、将来の宅配サーヴィスはこうなるかもしれない。配送拠点から住宅街までは自律走行の配送車が荷物を運び、そこから先はロボットやドローンが飛び出して玄関先まで向かう──。そんなSFのような世界が、あと少しのところまで見えているのだ。

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