自律走行トラックでUberに迫るスタートアップの「秘策」

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配送トラックの自動化をめぐり、大手のUberとは異なる方針で開発を進めるスタートアップが注目を集めている。完全に無人のトラックを「オフィスにいる運転手」が遠隔監視し、自律走行させるものだ。配送効率が上がるだけでなく、運転手のワークライフバランス向上や交通事故の減少も期待される。自動運転技術による最大の恩恵は、運輸業界にもたらされるのかもしれない。

TEXT BY AARIAN MARSHALL

WIRED(US)

配車サーヴィス大手のUberが、このほど「とてもクールで近未来的なテクノロジーを使ったサーヴィス」[日本語版記事]を発表した。自律走行トラックでアリゾナ州の344マイル(約554km)を横断し、商業配送を行うというのだ。もちろん、安全研修を受けたオペレーターが運転席に座り、想定外の事態が発生したら運転を代われるよう備えている。

スタートアップ企業であるStarsky Roboticsは、これが気に入らない。創業者で最高経営責任者(CEO)のステファン・セルツ=アクスマハーは、いかにもフロリダの人間といった風貌だ。彼はもっと大胆で、ちょっと恐ろしいことをやってのけると決めていた。

それは2月中旬のことだった。アクスマハーはアリゾナ州より法規制の緩いフロリダ州の路上で、無人のトラックを7マイル(約11km)走行させた。Starskyは2018年末までに、最低でも1台のトラックを使用して完全に無人の配車サーヴィスを始めたいという。

運転手のワークライフバランス向上と、離職率の低下に期待

この2つの実験は、「貨物輸送の未来」を分けるターニングポイントといえるだろう。それぞれのケースで、人間が担当する役割も異なる。

Uberはドライヴァーに“水先案内人”の役割を担ってもらうつもりでいる。出発地点から高速道路までの路面が安定しない範囲を運転したら、トラックを降りる。単純な長距離は自動運転で走行する。

トラックが高速道路を出ると、今度は別の人間が乗り込み、目的地までの残り数マイルを運転する。この役割が、大型コンテナ船の入港および出港時に水先案内人が行う業務に似ているという。

トラック輸送はこれまで、狭い地域内における配送手段だった。しかし、最近の流れは違ったものになりつつある。シリコンヴァレーのスタートアップ企業であるEmbarkはUberと同じ発想で17年秋、テキサスからカリフォルニアへの冷蔵貨物の輸送を開始した。

一方、Starskyは輸送用のトラックに人間を乗せるつもりはまったくない。「車輌には人間を乗せたくありません。楽しい仕事ではありませんし、危険ですから」とアクスハマーは言う。

トラック輸送業務は労働環境が悪いうえに、勤務時間は長時間におよび、友人や家族と過ごす時間もわずかしかとれない。また、その短所に見合うほどの給料も得られず、いい仕事ではないのだという。全米トラック協会の発表によると、米国の輸送サーヴィス業では17年の1年間で95パーセントのドライヴァーが入れ替わった。理由はこうしたワークライフバランスの悪さだという。

UberやEmbarkと同じように、Starskyのトラックも高速道路ではすべての運転を自動で行う。だが、難しい路面の道を切り抜けるとき、人が車両に乗り込んでハンドル操作をすることはない。彼らはビル内のコールセンターのような場所で業務を行う。動画を通じて1時間に10〜30台の車両を監視し、テレビゲームのコントローラーのようなハンドルを使って「運転する」。現時点で4人の“トラックドライヴァー”を雇用している。

自動運転技術が72兆円市場にもたらす「恩恵」

自律走行タクシーがマイアミやフェニックス、ピッツバーグ、サンフランシスコで試験的に運用されるようになれば、先進的な取り組みとして大きな話題になるだろう。だが、自動運転技術から最大の恩恵を得るのは、6,760億ドル(約72兆円)の規模を誇るトラック業界かもしれない。短期的にみれば、なおのことだ。

米国では荷物の取扱量がこれまでになく増えつつある(アマゾンのおかげだ)。ドライヴァー不足が解消される見込みはない。荷物の流通をもっと簡単に保てる技術があれば、経済面で確実に効果が上がる。また、米国では毎年約4,000人がトラックが関連する交通事故で亡くなる。これを解消し、安全を確保するという潜在的な効果も生じるだろう。

今後、トラックがどのように自動化されるかは、規制緩和と市場の自由化がどれくらい進むかによってくる。Starskyに関して言えば、資金調達のシリーズAラウンドで1,650万ドル(約17億6,300万円)の投資を受けたばかりだ。最高額を出資したのはシリコンヴァレーの投資会社Shasta Ventures(シャスタ・ヴェンチャーズ)だった。

現在、8つの州でトラックの“小隊編成”、つまり複数車両の同時走行が許可されている。それぞれの車両のセンサーを統合し、ワイヤレス通信を用いてアクセルやブレーキを同時に操作するので、ドライヴァーは先頭車両に1人いて、全体に気を配っていればよい。

カリフォルニアではPeloton Technologiesが、この“小隊編成配送”を手がける。18年中に商業利用の受け付けを開始すると発表している。

連邦政府による自律走行トラック関連法の規制緩和は、乗客用の車両に比べると遅れている。トラックの試験運行に関する法律が最終的に整備されるまでには、年単位とはいわないまでも数カ月はかかる可能性がある。

結局のところ、ロボット化したセミトレーラーは単に巨大で恐ろしいだけではない。いま就業している300万人の職を脅かす可能性もある。そうこうする間に、EmbarkやUberと同じく、Starskyも自律走行トラックによる輸送サーヴィスを実際に始めるだろう。

だが、最大の問題が手つかずのままになっている。ロボットがハンドルを握ったら、子どもたちに危険を知らせるクラクションを誰が鳴らすのだろうか?

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