Facebookとグーグルの寡占に対抗するメディア業界──「独禁法除外」でパワーバランスは是正されるのか

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米国のデジタル広告市場における、フェイスブックとグーグルのデュオポリー(2社独占)が問題となっている。コンテンツ制作のコストはメディアが負担しているのに、その利益の多くがこの2社に入ってしまうからだ。この状況を打破すべく米国の業界団体が立ち上がった。

TEXT BY NITASHA TIKU
TRANSLATION BY TAKU SATO/GALILEO

WIRED(US)

IMAGE BY WIRED JAPAN

フェイスブックでニュースパートナーシップ責任者を務めるキャンベル・ブラウンは、2月中旬にカリフォルニア州で開かれたカンファレンス「Code Media」で警告を発した。その相手は、フェイスブックから不当な扱いを受けていると考えているパブリッシャーたちだ。

「わたしの仕事は、質の高いニュースがフェイスブックに表示されるようにすること、そしてフェイスブックで活動したいと考えるパブリッシャーが、(中略)ビジネスモデルを成功させられるようにすることです」。ブラウン氏はこう述べたうえで、次のように言い放った。「自分たちにとって適切なプラットフォームではないと感じるのであれば、フェイスブックに来るべきではありません」

フェイスブックはこれまで、高い信頼を得ているジャーナリズムやローカルニュースのサブスクリプションビジネスをサポートすると約束してきた。だが、メディアに対するブラウンのとげとげしいメッセージは、フェイスブックがそうした姿勢から離れつつあることを示唆している。また、支配を強めるテクノロジープラットフォームとパブリッシャーとの間で、緊張が高まっている兆候を示す出来事だったとも言える。

米国のデジタル広告市場では、フェイスブックとグーグルが広告売上の73パーセントを支配している。こうした大手テクノロジー企業に対しては社会的な懸念が広がっており、パブリッシャー各社は、そうした懸念を利用しようとしている。

メディア業界は、現在の状況に対抗するための新しい武器を手に入れる可能性がある。下院議員のデイヴィッド・シシリーニ(ロードアイランド州選出、民主党)が3月7日付で、パブリッシャーを独占禁止法の適用外とする法案を提出したからだ。この法案が実現すれば、パブリッシャーがコンテンツの配信条件について、団体で交渉できるようになる。

シシリーニ議員によれば、この法案の狙いは、パブリッシャーと大手テクノロジー企業が公平な条件で取引できるようにすることであり、何らかの結果を押し付けることではない。独占禁止法の適用除外が認められていない状態でパブリッシャーが団結して交渉を行えば、ほかの企業と手を組んで取引価格を決めたり、取引を拒否したりすることを禁じる独占禁止法に抵触する可能性があるのだ。

ニュースが健全な民主主義を守る

この法案を積極的に支持しているのは、かつてアメリカ新聞協会と呼ばれていた業界団体「ニュース・メディア・アライアンス」(News Media Alliance:NMA)だ。米国とカナダにある2,000以上の新聞社が加盟しているNMAは、独占禁止法の適用除外を認めてもらうために、1年前からロビー活動を行ってきた。

NMAで理事長兼最高経営責任者(CEO)を務めるデイヴィッド・チャヴァーンは、「わたしたちにとっては、フェイスブックとグーグルが最も強力な規制者なのです」と言う。このデジタルデュオポリー(グーグルとフェイスブックの2社による独占状態)が、コンテンツの配信方法や優先度、それに検索結果やニュースフィードに表示される内容を決定しており、パブリッシャーの意見が反映されることはない。しかも、すべてのコストはパブリッシャーが負担しているが、そこから得られる利益の多くはデュオポリーが得ているのだ。

チャヴァーンCEOによれば、NMAは5つの改善策を求めている。パブリッシャーの読者に関するデータを開示すること、信頼度の高いパブリッシャーの記事を優先させること、パブリッシャーのサブスクリプションビジネスをサポートすること、広告売り上げからパブリッシャーに分配する分を増やすこと、そして、一部のコンテンツに対して料金を支払うことだ。

シリコンヴァレーの各社は、さまざまな業界を飲み込みながら、株式市場の最上位に登りつめてきた。だが、ニュース業界では競争への介入を認めるべきだとチャヴァーンは考えている。その理由は、ニュースが健全な民主主義を守る役割を果たしているからだ。

「質の低いネコ動画の掲載によって、社会が大きな損害を被ることはありません。質の低い映画やテレビ番組によっても、大きな損害を被ることはないでしょう。しかし、ジャーナリズムの質が下がれば、社会は損害を受けるのです」。チャヴァーンはそう述べたうえで、Pew Research Centerの調査に言及した。この調査によれば、2014年から16年の2年間で、米国では大手新聞社のウェブトラフィックが42パーセント増加した一方で、新聞広告の売り上げは40億ドル減少したという。

この件について、フェイスブックとグーグルにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

チャヴァーンによれば、議会関係者でさえ、ニュースの作成と配信にお金がかかることを理解しているわけではないという。最近も、ある議会職員から、ハリケーンのような災害を取材した記事については常に無料にしたほうがいいのではないかと言われたという。

チャヴァーンは、「なぜそういう話になるのでしょうか」と疑問を示し、記者を派遣するにはコストがかかることを指摘した。「無料のままで、ジャーナリズムの未来を構築できるような世界はどこにもありません」

分裂させられたメディア業界

シシリーニ議員の法案以外にも、独占禁止という観点からテクノロジー企業を抑制することを目指した動きはあったが、大きく前進した取り組みはまだない。議会が膠着状態から脱しておらず、独占禁止法がかなり長い間厳しく適用されていない現状を考えると、3月7日に提出された法案は、交渉への影響力にはなっても、それ以上は望めないかもしれない。チャヴァーンは、2月25日付けの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の論説において、パブリッシャーが一致団結してフェイスブックからコンテンツを引き上げる可能性を示唆した。

この件について3月6日に尋ねたところ、チャヴァーンは次のように回答した。「すぐにコンテンツを引き上げるようなことはありません。そのような行為が法的に認められるようにしたいだけです」

ニュース業界では、フェイスブックとグーグルが業界の存立を脅かす存在になっているとする見方がコンセンサスになりつつある。

バズフィードを例にとろう。同社はかつて、フェイスブックと緊密な関係にあり、フェイスブックで記事を配信することで勢いを拡大してきた。しかし、同社のCEOジョナ・ペレッティは17年12月、「グーグルとフェイスブックは広告売上の大半を得ているが、彼らがクリエイターに支払っている金額は、クリエイターがユーザーに提供している価値に比べてあまりに低い」と書いている

2月にはさらに一歩踏み込んで、フェイスブックはニュースフィードから得た収益を分配すべきだと書いた。フェイスブックの収益は、そのほとんどがニュースフィードからもたらされているのだ。

とはいえ、シシリーニ議員の法案に関して、業界は一枚岩になりきれていない。一部のローカルニュース企業やオンライン専門のパブリッシャーは、適用除外を求めることは正しい戦略ではないと述べている。

この提案が最初に発表されたとき、業界団体の「ローカル・メディア・コンソーシアム」(加盟企業の一部がNMAと重複している)は、適用除外を求めることで保護主義者とみなされ、プラットフォーム企業を遠ざける可能性について警告した(グーグルも、このコンソーシアムの企業パートナーに名を連ねている)。

Gizmodo Media GroupのCEOラジュ・ナリセッティは、メディア業界で意見が分かれている現状は、団体交渉にとって大きな障害となる可能性があると考えている。そして、この分裂状況をもたらした責任の一端がフェイスブックにあると指摘する。

「フェイスブックはニュースパブリッシャーの扱いに関して、『分裂させて統治せよ』という戦略を実にうまく行っています。選ばれたベータテストへの参加などの誘いを提供して、パブリッシャー同士が争う状況を意識的につくり出しているのです」と、ナリセッティは述べる。「例えば、同社は何年にもわたって無料サイトを支援し、ペイウォールをひどいユーザー体験だとして追放してきたにもかからず、突然、大手ブランドと手を結びました」

つまり、『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』など、サブスクリプションビジネスを展開したり、ペイウォールを構築したりしている大手ブランドのことだ。

ナリセッティCEOは、パブリッシャーを団結させる試みが失敗してきた原因として、デジタルパブリッシャーごとにビジネスモデルが大きく異なることも挙げられる、と指摘する。「すべてのニュースパブリッシャーが、潜在的なライヴァルなのです。どこを『ホームグラウンド』にしているかは関係ありません」

それでも、NMAのメンバーであるUSA Today Networkのマリベル・ペレズ・ワズワース社長は、公正な競争条件を最も早く実現する手段として、この法案を支持している。「問題は、こうしたオンラインプラットフォームと仕事をしているパブリッシャーのなかから、彼らの圧倒的な市場支配に対抗できる大きな力をもった企業が出てこなかったことです」と同氏は語った。

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