相対性理論を応用して高度を測る?原理と実例を把握しよう(前編)

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東京大学と理化学研究所による研究グループは、2016年8月15日、英科学誌「Nature Photonics」(電子版)上で、ドイツ生まれの物理学者A.アインシュタイン博士(1879年~1955年)が唱えた一般相対性理論に基づいて、時間の流れのわずかな違いから標高差を測定することに成功したと発表しました。

研究グループによると、開発した技術を応用すれば、活火山や休火山の標高の変化をリアルタイムで監視でき、火山活動の予測や観測困難な地域での高度測定も可能になるということです。アインシュタインの一般相対性理論とはどのような理論なのか、また、『時間』と『高度』、『火山活動』といったまるで関連のなさそうな要素が一般相対性理論によってどのように結び付くのかについて説明してまいります。そしてそれらを踏まえたうえで、今回の実験はどのように実施されたのか、過去にはどのような相対性理論を応用した『時間』と『距離』に関する実験が実施されたのか、また、それらから分かる事実について紹介してまいります。

Bokic Bojan / Shutterstock.com

一般相対性理論と『時間』

一般相対性理論では、重力が強いところでは時間も重力によって引っ張られ、重力が弱いところと比べるとゆっくり進むと考えられています。重力は2点間の距離の二乗に反比例しますので、磁場の影響なども受けるものの、地球上の重力は標高が1センチメートル高くなると重力はその分弱まり、時間の進み方も1.1×10のマイナス18乗だけ遅くなると計算できるのです。理論上はこのように時間と重力の関係が簡単に数値化できますが、実際には高精度なセシウム原子時計でも、1.1×10のマイナス18乗というわずかな時間の差を捉えることは困難ですので、一般相対性理論によって示される時間と重力、高度との関連性を実験によって証明することはできなかったのです。

今回、東京大学と理化学研究所による研究グループは、この時間と重力、高度の関連性を証明するために、まず、『光格子時計』と呼ばれる1×10のマイナス18乗の精度まで測れる時計を開発しました。この『光格子時計』を約15キロ離れている東京大学と理化学研究所の2カ所に設置し、両地点で流れる時間の差を調べ、これらの研究所の標高差が15メートル16センチという結果を得たのです。国土地理院が現地で測ったデータと比較すると、誤差はわずか5センチ以内であることが分かり、理論上の重力・時間・高度の関係性が、実験でも証明できることを示したのです。

今後、同研究グループは光格子時計の精度をさらに高め、隆起活動を続けている山地の標高計測や、火山活動の前触れとなる標高変化をリアルタイムで監視するシステムの開発などに役立ていきたいと述べています。あまりにも微小な違いしかないために、地球上のどこでも同じように進んでいると思われがちな『時間』ですが、進み方が重力によって変わること、重力の強さと絡めることで『高度』や『距離』を測定できることが、理論だけでなく現実に証明されたのです。

※「時間と重力の関係」について実証したのは、今回の東京大学と理化学研究所による研究グループの実験が初めてですが、「時間と高度の関係」においては、すでに1960年、ハーバード大学のパウンド氏とレプカ氏において実証されています。

「時の流れ」の違いで標高差センチ単位測定 東大など「光格子時計」で成功

時間の遅れは、実験室ではすでに実証済み

今回は、時間と重力、高度の関係を、地球上に存在する2つの研究所の位置と時間を使って大規模な証明を実施しましたが、実際のところ、相対性理論において予言されていた「重力による時間の遅れ」現象は、アメリカ国立標準技術研究所のJames Chin-wen Chou氏らの研究チームによって、地上実験室に設置された33センチという小さな高低差の中の原子のわずかな運動によって実証され、2010年9月24日のアメリカの科学誌『Science』上で発表されています。

Time-warping occurs in daily life(リンク先英文記事)

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