ゲームから学べ、ゲーマーとつくれ:ゲーム専門動画配信サーヴィス「Twitch」COO、ケヴィン・リン独占インタヴュー

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オンラインで世界と切磋琢磨することが容易になったいま、ゲームは単なる「遊び」ではない。プレイが世界に配信され、1億人以上の観客が熱狂すれば、その「遊び」は世界を変える可能性すらある。ゲーム専門動画配信サーヴィスの「Twitch」の共同創業者兼COOのケヴィン・リンが考える、その可能性とは。(『WIRED』VOL.25より転載)

PHOTOGRAPH BY JUNICHI HIGASHIYAMA
TEXT BY HIDEKUNI SHIDA

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KEVIN LIN︱ケヴィン・リン
2004年にイエール大学を卒業してから職を転々とする。動画配信を手がけるスタートアップ、Justin.tvにジョインしたのち、ゲームに特化したTwitchの立ち上げを手がけ、ユーザーを引きつけるための活動や、ゲーム以外の分野とのコラボレーションを手がけ、Twitchブランドの確立に尽力している。いまはまっているゲームは『Hearthstone』。

10月11日発売の『WIRED』VOL.25は、「ブロックチェーン」特集。未来学者ドン・タプスコットによるメッセージから、スペインのアナキストであるルイス・アイヴァン・クエンデの肖像、岩井克人のビットコイン論、斉藤賢爾が語る5つの可能性、そして漫画家・西島大介による世界初(?)のブロックチェーン漫画まで、インターネット登場以来の、もしくはそれ以上の衝撃とも囁かれるブロックチェーンの未知なるポテンシャルを読み解く。さらに米国サイバー犯罪史上最も大がかりな捜査の果てに、ビットコインの存在を世に知らしめた闇サイト「Silk Road」事件の全貌を綴ったルポルタージュを20ページにわたって掲載する。そのほか、米大統領選を目前にして考える「新しい民意」、新しい本のエコシステムを構想する内沼晋太郎とバリューブックスの挑戦を追ったストーリーを掲載。特集の詳細はこちらから。

“ゲーマーによるゲーマーのための会社”は1台のカメラで始まった。

2007年3月ケヴィン・リンと仲間たちはノートPCにウェブカムをセットすると、自分たちの日常を24時間リアルタイムに配信し始めた。ご飯を食べる、仲間と会議をする、寝る……。「Justin.tv」と名づけられた彼らのサーヴィスは、同時期にUstreamなどのサーヴィスも始まったこともあり、動画配信というひとつのムーヴメントをつくりあげていく。そこで彼らが次に打った一手は「ゲームの配信」に特化することだった。

「当時のぼくはフォークリフトで荷物を運ぶ仕事をしたり政府の仕事を手伝ったり、いろいろな仕事をしていたんだけど、最も情熱的に楽しんでいたものはゲームだったんだ。そこで自分が好きなゲームの配信だけにフォーカスすることにした。それが結果的にぼくらとほかの配信サーヴィスとの最大の違いになった」

「Twitch」はゲームの実況や、ゲーム大会の中継などをリアルタイムで配信する、ストリーミングサーヴィスである。2011年にJustin.tvから派生して誕生した。いまでは月間150万人以上に配信し、1億人以上が視聴するほどに成長した。14年には総コンテンツ視聴時間はなんと2.7億時間にのぼり、全ユーザーの60%以上が週20時間以上をTwitch上で過ごしている。トラフィック量はいまや北米ではFacebookを凌駕し、圧倒的なエンゲージメントを誇る。なぜここまで大きなコミュニティをゼロからつくりあげることができたのだろうか。ケヴィンは「大事なことはすべてゲーマーが教えてくれた」と言ってのける。

「ぼくらはゲームの配信を始めると、たくさんのゲーマーたちに接触した。どんな実況をしたいか、どんな機材を使っているか、じっくりと時間をかけてインタヴューしていったんだ」

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本日10月31日(月)、Twitch上でリリースされた絵文字。これは日本人配信者「つくる女」とのコラボレーションによって生まれたものだという。

彼らはTwitchのチャット用に独自の絵文字をつくるなど、コミュニケーションが楽しくなるような仕掛けをたくさん用意した。やがて、そのコミュニティに不思議な現象が起きるようになっていく。代表的な例が『TwitchPlaysPokemon』だ。これはゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター赤』を改造し、Twitch上で一度に何人でも同時にプレイできるようにしたもの。数千人のプレイヤーがひとりのキャラクターを操作し、10万人以上の視聴者がそのプレイをTwitchで観戦するという、大きなイヴェントになった。

「『TwitchPlaysPokemon』はザ・クリエイターと名乗る匿名のユーザーがTwitchのAPIを使って自発的につくったゲームだった。ぼくらは何も関与していない。ユーザーがつくって、ユーザーが遊び、ユーザーが観戦する。そういうインタラクションが自然と生まれて、コミュニティが発展していったんだ」

15年、彼らは複数の企業から買収をもちかけられた結果、Amazon.comの傘下に入った。ただ、Twitchは親会社から独立性を保ったまま、マイペースに展開を続けている。

「小さなころ、ゲームを親から禁止されたものだった。そんなことより宿題をやれって(笑)。だけど、遊び、競争、コラボレーションのやり方をぼくはゲームから学んだんだ。もっと多くの人がゲームから学ぶようになればいいと思う。もっと社会的な影響力をゲームはもてる。その一翼を担えたなら、これほど嬉しいことはない」

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