「水の入った瓶」から「第3の目」まで──写真で見る眼鏡2,000年の歴史

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「水の入った瓶」から始まった眼鏡の歴史。視力矯正器具から知性の象徴、ファッションアクセサリー、ハイテクガジェットと時代に応じて眼鏡はその役割を変えてきた。そしてイスラエルのデザイナーが想像する「未来の眼鏡」は、ぼくらの予想をはるかに超えるものだった。

TEXT BY MARGARET RHODES
TRANSLATION BY KAORI YONEI/GALILEO

WIRED(US)

  • 1/13イスラエルのホロン・デザインミュージアムで開催されている「Overview」は、眼鏡の歴史と進化をひも解く展覧会だ。検眼医クロード・サミュエルの個人的なコレクションが公開されている。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • ダナ・ベンシャロムがデザインした眼鏡

    2/13イスラエルで活躍するデザイナー50人による新たな眼鏡のコンセプトも紹介されている。彫刻を思わせるこの眼鏡はダナ・ベンシャロムがデザインしたもので、眼鏡をかけたら誰もがするジェスチャー、鼻の部分を押し上げるという行為に焦点を当てている。鼻の部分が車輪になっている眼鏡は一体どのような感じだろう?PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 18世紀の中国でつくられた眼鏡

    3/13まずは、眼鏡の歴史から見ていこう。学芸員のマヤ・ドゥヴァッシュはベンジャミン・フランクリン以前の眼鏡までさかのぼっている。科学者やデザイナーはしばらく、眼鏡を顔に固定する方法すら思い付いていなかった。写真は、18世紀の中国でつくられた眼鏡。青銅とレンズを組み合わせた折り畳み式の眼鏡で、手に持って使用する。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • ベンジャミン・マーティンが1756年にデザインした眼鏡

    4/13顔に固定できる眼鏡が登場すると、人々の両手は自由になり、眼鏡をかけて事務仕事や執筆作業ができるようになった。写真は、ベンジャミン・マーティンが1756年にデザインした、耳で固定する眼鏡。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 19世紀半ばの英国でつくられた金属と象牙の検眼器

    5/13産業革命によって新しい製法がもたらされ、新たな用途、革新が生まれた。眼鏡のデザインとともに、検眼の道具も進化した。写真は、19世紀半ばの英国でつくられた金属と象牙の検眼器。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 19世紀の英国でつくられたオペラグラス

    6/13娯楽用の眼鏡も生まれた。写真は、19世紀の英国でつくられたオペラグラス。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 1904年に英国でデザインされた、少し高度な検眼器

    7/131904年に英国でデザインされた、少し高度な検眼器。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • イタリアでつくられたプラスティックのフレーム

    8/13産業革命をきっかけに、眼鏡はファッションアクセサリーになった。「頭に浮かんだアイデアを何でも形にできるようになり、眼鏡は視力矯正の道具からスタイルへと変化しました」とドゥヴァッシュは述べている。写真は、イタリアでつくられたプラスティックのフレーム。間違いなく、スタイル重視だ。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 1960年にピエール・カルダンがデザインしたアヴァンギャルドなプラスチック製眼鏡

    9/13こちらもスタイル重視。1960年にピエール・カルダンがデザインしたアヴァンギャルドなプラスチック製眼鏡だ。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • オマー・ポラックがデザインした眼鏡

    10/13眼鏡は、ファッションからテクノロジーへとさらなる進化を遂げようとしている。ドゥヴァッシュはそうした未来を垣間見るため、50人のデザイナーに眼鏡の創作を依頼した。写真は、オマー・ポラックによるデザイン。ハイテクではなく、むしろ地元にこだわった。テルアヴィヴの木工所が立ち並ぶ一角で製造。層状になった素材は、すべて異なる木工所でつくられている。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • OTOTOによる眼鏡

    11/13OTOTOによる眼鏡には第3の目が付いている。もしかしたらマインドフルネスのトレンドを意識しているのかもしれない。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • グレゴリー・ラリンの眼鏡

    12/13グレゴリー・ラリンの眼鏡は、ファンタジーの世界からインスピレーションを得ている。新しいスーパーヒーロー(あるいは悪役)が並んでいる。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • タル・グゥルによる眼鏡

    13/13タル・グゥルはウェアラブルの新しい形を提案。これらはあくまでコンセプトで、実際にかけることはできない。しかも、眼鏡の次なるトレンドを予期させるものでもない。ただ、現代のデザイナーたちが眼鏡についてどのように考えているかがよくわかる。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 検眼医クロード・サミュエルのコレクション

    検眼医クロード・サミュエルのコレクション

イスラエルのホロン・デザインミュージアムで開催されている「Overview」は、眼鏡の歴史と進化をひも解く展覧会だ。検眼医クロード・サミュエルの個人的なコレクションが公開されている。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • ダナ・ベンシャロムがデザインした眼鏡

    ダナ・ベンシャロムがデザインした眼鏡

イスラエルで活躍するデザイナー50人による新たな眼鏡のコンセプトも紹介されている。彫刻を思わせるこの眼鏡はダナ・ベンシャロムがデザインしたもので、眼鏡をかけたら誰もがするジェスチャー、鼻の部分を押し上げるという行為に焦点を当てている。鼻の部分が車輪になっている眼鏡は一体どのような感じだろう?PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 18世紀の中国でつくられた眼鏡

    18世紀の中国でつくられた眼鏡

まずは、眼鏡の歴史から見ていこう。学芸員のマヤ・ドゥヴァッシュはベンジャミン・フランクリン以前の眼鏡までさかのぼっている。科学者やデザイナーはしばらく、眼鏡を顔に固定する方法すら思い付いていなかった。写真は、18世紀の中国でつくられた眼鏡。青銅とレンズを組み合わせた折り畳み式の眼鏡で、手に持って使用する。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • ベンジャミン・マーティンが1756年にデザインした眼鏡

    ベンジャミン・マーティンが1756年にデザインした眼鏡

顔に固定できる眼鏡が登場すると、人々の両手は自由になり、眼鏡をかけて事務仕事や執筆作業ができるようになった。写真は、ベンジャミン・マーティンが1756年にデザインした、耳で固定する眼鏡。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 19世紀半ばの英国でつくられた金属と象牙の検眼器

    19世紀半ばの英国でつくられた金属と象牙の検眼器

産業革命によって新しい製法がもたらされ、新たな用途、革新が生まれた。眼鏡のデザインとともに、検眼の道具も進化した。写真は、19世紀半ばの英国でつくられた金属と象牙の検眼器。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 19世紀の英国でつくられたオペラグラス

    19世紀の英国でつくられたオペラグラス

娯楽用の眼鏡も生まれた。写真は、19世紀の英国でつくられたオペラグラス。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 1904年に英国でデザインされた、少し高度な検眼器

    1904年に英国でデザインされた、少し高度な検眼器

1904年に英国でデザインされた、少し高度な検眼器。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • イタリアでつくられたプラスティックのフレーム

    イタリアでつくられたプラスティックのフレーム

産業革命をきっかけに、眼鏡はファッションアクセサリーになった。「頭に浮かんだアイデアを何でも形にできるようになり、眼鏡は視力矯正の道具からスタイルへと変化しました」とドゥヴァッシュは述べている。写真は、イタリアでつくられたプラスティックのフレーム。間違いなく、スタイル重視だ。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • 1960年にピエール・カルダンがデザインしたアヴァンギャルドなプラスチック製眼鏡

    1960年にピエール・カルダンがデザインしたアヴァンギャルドなプラスチック製眼鏡

こちらもスタイル重視。1960年にピエール・カルダンがデザインしたアヴァンギャルドなプラスチック製眼鏡だ。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • オマー・ポラックがデザインした眼鏡

    オマー・ポラックがデザインした眼鏡

眼鏡は、ファッションからテクノロジーへとさらなる進化を遂げようとしている。ドゥヴァッシュはそうした未来を垣間見るため、50人のデザイナーに眼鏡の創作を依頼した。写真は、オマー・ポラックによるデザイン。ハイテクではなく、むしろ地元にこだわった。テルアヴィヴの木工所が立ち並ぶ一角で製造。層状になった素材は、すべて異なる木工所でつくられている。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • OTOTOによる眼鏡

    OTOTOによる眼鏡

OTOTOによる眼鏡には第3の目が付いている。もしかしたらマインドフルネスのトレンドを意識しているのかもしれない。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • グレゴリー・ラリンの眼鏡

    グレゴリー・ラリンの眼鏡

グレゴリー・ラリンの眼鏡は、ファンタジーの世界からインスピレーションを得ている。新しいスーパーヒーロー(あるいは悪役)が並んでいる。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

  • タル・グゥルによる眼鏡

    タル・グゥルによる眼鏡

タル・グゥルはウェアラブルの新しい形を提案。これらはあくまでコンセプトで、実際にかけることはできない。しかも、眼鏡の次なるトレンドを予期させるものでもない。ただ、現代のデザイナーたちが眼鏡についてどのように考えているかがよくわかる。PHOTOGRAPH BY ELI BOHBOT

技術が進歩するにつれて、眼鏡は「時代遅れ」になると思っている人もいるかもしれない。例えば、快適さや便利さに関しては、コンタクトレンズやレーザー手術の方が眼鏡に勝る。けれどもテクノロジーは、いまでも眼鏡という形状に依存し続けている。「Google Glass」や仮想現実(VR)用のデヴァイス、スナップの「Spectacles」などは、視力の矯正には役立たないが、間違いなく視覚に変化をもたらしてくれる。そして、これらはすべて顔に装着するものだ。

イスラエルの「ホロン・デザインミュージアム」で開催されている「Overview」は、興味深い眼鏡の変遷をテーマにした展覧会だ。さまざまな形、大きさ、色の眼鏡を、2つのセクションに分けて展示している。ひとつは、イスラエルの検眼医が収集してきた歴史的なコレクション。もうひとつは、イスラエルで活躍するデザイナーたちが新しい眼鏡としてコンセプトをつくった50のデザインだ。この展覧会を見れば、眼鏡が医療器具から知性の象徴、ファッションアクセサリーへと進化したことがわかる。そして多くの場合、変化を促したのは新技術だ。

展覧会はまず、「水の入った瓶」から幕を開ける。学芸員のマヤ・ドゥヴァッシュは「これが最初の拡大鏡です。当時の科学者たちは、水で満たされた瓶をのぞくとその向こうにある文字がよく見えることに気付いたのです」と説明する(紀元1世紀皇帝ネロの家庭教師だった小セネカが、「水を満たした球形のガラス器やグラスを通せば、文字が拡大してはっきり見ることができる」と書いた文献があるという)。

この発見から、遠視用の原始的な眼鏡が生まれた。そして、技術者やデザイナーが長い年月をかけ、ガラスと金属でできた眼鏡を鼻に固定する方法を考え出した。これによって人々の両手は自由になり、眼鏡をかけて事務仕事や執筆作業ができるようになった。ドゥヴァッシュによれば、眼鏡が読み書きと関連付けられ、知性の象徴になったのは13世紀ごろのことだという。

産業革命後に「ファッション」へと進化

数世紀後、産業革命によって新しい製法がもたらされた。「頭に浮かんだアイデアを何でも形にできるようになり、眼鏡は視力矯正の道具からスタイルへと変化しました」。そこから、眼鏡を目立たせたり、あるいは逆に隠したりするような発想も生まれた。

19世紀のフランスの富裕層は、眼鏡をかけることを拒んだ。眼鏡をかけると自分の欠点を認めていることになるからだ。その代わり、細部まで凝った折り畳み式のネックレス、単眼のオペラグラスといった形で視力矯正用のレンズを隠した。

その後、建築家ル・コルビュジエの愛用フレームやジョン・レノンの丸眼鏡、眼鏡販売店チェーン「レンズクラフターズ」の登場などを経て、現在に至る。そして、眼鏡はファッションからテクノロジーへとさらなる進化を遂げようとしている。

ドゥヴァッシュはイスラエルのデザイナー50人に対して、ファンタスティックな眼鏡をデザインしてほしいと依頼した。鼻の部分が小さな彫刻になった眼鏡、第3のレンズが付いた眼鏡など、完成した50のコンセプトは想像をはるかに超えている。実際にかけることはできないし、眼鏡の次なるトレンドを予期させるものでもない。ただ、現代のデザイナーたちが眼鏡についてどのように考えているかがよくわかる。いずれにせよ、水の入った瓶も顔には装着できなかったのだから。

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