人工知能が、ジェット機を人間より安全快適に飛ばせる日が近づいてきた

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人工知能が、空へも本格的に進出し始めた。航空機のセンサーが生み出す膨大なデータから整備士の走り書きまで分析し、さらには飛行機の操縦まで学習する。その先には、緊急事態や悪天候にも対応する「完全なる自動操縦」まで見えてきた。

TEXT BY ERIC ADAMS
TRANSLATION BY RYO OGATA/GALILEO

WIRED(US)

airplane

PHOTO:GETTY IMAGES

さまざまな分野で活用が始まっている人工知能(AI)が、空にまで本格的に進出しようとしている。航空便の遅延を予測し、より効果的な遅延の回避策を空港や航空会社に示すアルゴリズムの開発が、すでに進んでいるのだ。英イージージェットやエミレーツ航空などの航空会社は、発券プロセスの簡易化や機内体験のパーソナライズなどにAIを活用している。だが、AIが活用されていく場所の“本命”は、コックピットだ。

ボーイングとカーネギーメロン大学(CMU)は2015年、航空宇宙データ分析研究所を設立した。機械学習によって、山のようにある航空機関連のデータを活用するのが目的だ。

「航空機には大量のセンサーが搭載されており、秒単位で膨大な量のデータが生み出されています。しかも現在の分析手法では処理が間に合わないほど大量に蓄積されているのです」。そう語るのは、CMUのコンピューター科学者で同研究所のプロジェクトリーダーを務めるジェイミー・カーボネルだ。

こうした膨大なデータの処理には、さまざまな形式のデータに対応できるAIが最適解となる。AIなら、センサーのデータのように書式が厳格に決められているものだけでなく、整備士の走り書きまで解読できるからだ。

しかし、たとえすべてのデータを把握して理解するアルゴリズムができたとしても、完全な予測を妨げる要因は存在しうるだろう。そこでカーボネルは、こうした要因を特定し、予測に足りないデータをリクエストできる賢いAIエンジンを開発しようと考えている。

「同じルートを同じ構成で飛んでいる航空機が2機ある。しかしなぜか燃料消費の表示値が異なるとしましょう。われわれが目指すのは、すべてのパラメーターをクロスチェックして詳細に分析できるシステムです。パイロットの訓練方法や気象データといった、『パフォーマンスに影響している可能性が高いが手元にないデータ』を見つけだし、それを手配できるようにするのです」

人為的ミスもフォローする自動操縦

さらに高度な研究も進められている。緊急時の航空機の操縦を、AIにサポートさせようというのだ。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の、ハイサム・バオマーとピーター・ベントレーらのチームが開発中のオートパイロットは、熟練パイロットのやり方を学習して、似た状況で同じように振る舞う危機管理対応を行うという。

「ストレス、情報過多、あるいは訓練不足などによって引き起こされる人為的ミスの因子に立ち向かうことで、安全性を高めていきたいと考えています」とバオマーは語る。

現在のオートパイロットは、緊急時以外の基本的な操縦は完璧にこなすが、水平直線飛行から外れると弱点が露呈する。例えば、強い乱気流が原因でオートパイロットが解除されたり、修正を試みてもかえって問題が悪化したりすることがあるのだ。人間のパイロットたちはオートパイロットを常に監視し、緊急時に介入するよう訓練されているが、当然のことながら人間が間違うこともある。

バオマーは、何が起きても確実に正しく対処し、同時に何が起きているのかをコックピット内の人間に把握させられるようなAIベースのオートパイロットの構築を目指している。「インテリジェント・オートパイロットシステム」と名づけられたバオマーらの技術は、人間のパイロットと同じ訓練を受ける。

研究チームは現在、デスクトップ版のフライトシミュレーター「X-Plane」の高性能プロ向けヴァージョンを使って、悪天候やエンジンの故障・出火、緊急着陸や旋回といった状況下でのボーイング777型機の操縦法をオートパイロットに教えている。

これは「教師あり機械学習」に基づいている。まだ経験のないオートパイロットを、航空学校に通う人間の実習生のように扱うのだ。「まず学習課題を人間の教官がやってみせ、システムにそれを観察させます。すると、ニューラルネットワークを通して学習モデルが生まれます。そのうえで、オートパイロットに操縦をすべて委ね、教師のやり方をまねるのを今度はわたしたちが観察するのです」と、バオマーは説明する。

これまでのところ、システムの成績は上々だ。操縦に慣れていない機種を飛ばしたり、当初のトレーニングにはなかった気象条件に対処したりもできている。これを受けて研究チームは今後、産業用のフライトシミュレーターや遠隔操縦の無人航空機(UAV)へのシステムの導入を目指し、航空業界にアプローチする考えという。

最後にたちはだかる「規制」という障害

航空機への配備までの道のりについてバオマーは、実際にはテクノロジーよりも技術導入の許可を得るプロセスのほうが難題だと言う。「妥当性の確認と検証のプロセスはとても大規模でコストもかかります。それでも新技術を航空機に導入するには、安全のための要件として必ず実施しなければなりません」

規制上の障害をクリアしたら、こうしたシステムは人間のパイロットの時代と“その次の時代”とをつなぐものになるだろう。コックピットの自動化が進み、操縦桿とラダーペダルで航空機を操縦する日々は急速に終わりに近づいている。ヒューマンエラーの心配なく航空機を飛ばせることの魅力が証明されるかもしれない。

しかし、それでもまだ道半ばだ。自動操縦と手動操縦が併存する間は、パイロットが航空機をきちんと管理できるようにうまくコントロールする必要がある。このギャップを埋めていくうえでも、AIは極めて重要な位置を占めるだろう。

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