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AWS Summit Tokyo 2017のDay4(6月2日)は、脳科学者の茂木健一郎氏による特別講演から始まった。

「シンギュラリティはもう起こっている」

これは、茂木氏が一番初めに会場に投げかけたメッセージだった。脳科学者である茂木氏は、近いようで対照的な人工知能と脳科学に関してどのように考えて投げかけたメッセージなのだろうか。

googleのAlphaGo(アルファ碁)や将棋のAI対戦に関する話題が関連のニュースを賑わしている。

茂木氏は、「囲碁とか将棋は組み合わせの数を考えると天文学的な数字で、強化学習のメカニズムを使って人工知能が囲碁とか将棋をマスタして人間を破ったのは素晴らしい。しかし、それは人間の思考能力とは違うもの。囲碁や将棋のようなボードゲームを前提にしていることとは何だろう。」と会場に投げかけた。

一方、茂木氏は人間の脳についてもこう述べた。

「人間の脳はたいしたことない。今日朝起きてからここに来るまでの時間の意識のながれを振り返ってほしい。どの一瞬をとってもたいした情報処理をしていない。」

心理学者のチクセントミハイによると、だいたい意識のデータレートは1秒あたり128ビット程度で、会話をしているとその半分を使われてしまうという。

茂木氏は、「人間の脳は非常に狭くボトルネックのある構造をしていて、人間の脳のアーキテクチャはそういうものなのだ」と述べた。

なぜ人間の脳ごときとくらべるのか?

茂木氏は、「私が根本的におかしいと思っているのは、なんで人間の脳ごときと比べるのか?ということ」と強調する。

「世界チャンプが一生かけてやってきたチェスも、今の皆さんの技術力であれば1ヶ月もあれば勝てるくらいの人工知能を育成することも可能なのではないか。つまり、人工知能が一カ月でできてしまうことを人間は一生かけてやってきた。人工知能はAmazon Web Serviceのように同時に様々な処理をすることができるが、人間の脳は一度に一つしか集中することができないようなアーキテクチャになっている。これは人類が生物としての進化の中でこうなっているのだ」と述べた。

自動運転のモデル構築を例に人間の脳の限界についてもこう述べた。

「2000人いれば、2000人分のデータが人間の脳にあるはずだが我々がそれを見ることはできない。例えば雪道の走行の経験がある人がいて、その経験を私が自分の脳に欲しいとしても無理だが、自動運転のシステムではそれができるのだ。1000台で走って1000台分のデータを集めてデータを統合して、いろいろな路面状況を走行したデータを反映した自動運転をのモデルを簡単に構築することできる。このような世界がもうすでにあるのに、人工知能と人間の脳を比べてシンギュラリティが来るとか来ないとか言っているのは非常にナンセンスなのである。」

認知科学を生態学的にアプローチ

「シンギュラリティと言われているのは、人間の認知能力、判断能力を超える”Artificial General Intelligence(汎用人工知能)”という考え方である。」

一方、認知科学には違うアプローチがあることについて語る。

「ギブソン(アメリカの知覚心理学者)が提案していた、エコロジカルアプローチ、生態学的アプローチというのがある。ギブソンは極端には脳はなんの計算もしなくても良い、情報は環境の中にあると述べていた。これは”アフォーダンス”という概念で、環境の中に様々なアクションの可能性があり、我々はそれをただ認識しているだけ。場合によっては我々の意識は、脳は”アフォーダンス”を認識しないまま行動しているのだ。

例えば、人がまったく川幅の違う川を飛べるか飛べないかを判断することであったり、あるいは鳩が飛んでいるときに障害物をどうよけるのかであったり。鳩には障害物の大きさや距離は絶対的にわからないが、どう物体の視覚が変化しているかを計算すると、衝突するまでの距離がわかるということが数学的に示すことができ、実際、障害物との衝突1秒前なると活動する神経細胞が鳩にあることが見つかっていて、これがアフォーダンスの例だ」という。

「つまり、脳の中に何らか表現があって、それをもとに計算するから我々が賢いのではなくて、環境との相互作用を通して、場合によっては自分の神経を使ってある”振る舞い”をすると、きちんとそれがうまくいくようにできているから我々は賢く見えるのである。つまり、生態学的アプローチというのは脳が一個一個賢くなければいけないというアプローチとは全く違うのだ。」と強調した。

そして、「Amazon Web Serviceをはじめとして、今我々が目の当たりにしているいま情報科学の革命というのは、むしろ生態学的なアプローチでとらえた方がとらえられるのだろうということ。シンギュラリティが来るか来ないという議論は意味がないし、あえて言うとシンギュラリティは来てしまっている。我々の認知システムと全く違う形で何かが起ころうとしている。」と続けた。

感情とパーソナリティはAIで再現できない

茂木氏の考えでは、人工知能では今のところモデル化は難しいとのことだ。ロボット関連で感情モデルを入れたという話があるが、人間の脳の感情の数理モデルはまだないので、「入れた」のではなくい「入れる試みをしている」というのが正しい表現だという。

そもそもパーソナリティにはどのような要素があるのか。

  • Openness to Experience(経験に対する開放さ)
  • Conscientiousness(誠実さ)
  • Extraversion(外向性)
  • Agreeableness(協調性)
  • Neuroticism(神経質さ)

という5大要素がある。ようやく脳の部位の仕組みが比較的ほんの一部わかってきた程度で、これらが人工知能にインプリメンテイションされるの今時点ではほぼ無理だということを強調した。

そして、「人工知能とかロボットが発展していく方向は、おそらく我々の脳が生物としての生存とか繁殖だとかそういうことを最適化するために発展してきた方向とは違う。感情とかパーソナリティとかのこういった脳の特徴は10年たっても20年たっても30年たってもおそらく再現はできないでのではというのが予想。感情とかパーソナリティのシンギュラリティが来るかというと、おそらく来ないだろう。」と述べた。

未来に向けて

茂木氏は最後に、「IT革命とかコンピューター革命の最も重要なポイントは、子供たちがずっと遊んでいる時のように人間の創造性を解放するということ。10年後20年後のどういう社会が来ているかは予想できないが、少なくとも人間の脳のアーキテクチャーと比べてシンギュラリティが起きたかどうかと議論している時代は終わっていて、技術的なチャレンジとしてはそこにフォーカスすべきではない。様々なところで技術的なシンギュラリティが同時多発的に色々なところからおきる。そういうものを設計し推進してく皆さんが私は英雄だとおもうので人間の脳の限られたキャパシティの事は気にせずに、一人の人間として自分の個性や創造性、遊び心を大事にして生きていって欲しい」と締めくくった。

AI/IoT/VR パビリオン

昨年はIoTソリューション中心のパビリオンであったが、今年は新たにAIとVRのコーナーも増設され「AI/IoT/VR パビリオン」として展示コーナーが設置されていたのでいくつかピックアップし簡単に紹介する。

シャープ

シャープは、今まで自社製品に組み込むために開発してきたAI、IoT関連技術などをBtoB向けに展開、パッケージした「AIoTプラットフォーム」について紹介していた。ヘルシオやRoBoHoNに関連した自然対話ソリューションや自社工場製造ラインのノウハウを活用したアプリケーションなど自由に組み合わせ活用することができるという。

ABEJA

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1年半ほど前、IoTNEWSでもインストアアナリティクスとして紹介したABEJAプラットフォーム。いまは小売業にとどまらず様々な製造現場での利用も進んでいるという。ABEJA プラットフォームは、大量データの「取得」、「蓄積」、「学習」、推論などの「実行」、あらゆる出力に対応した「フィードバック」を行うことができる。

「買う理由、買わない理由」を人工知能が解き明かす -ABEJA(アベジャ)CEO岡田氏インタビュー

aptpod

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aptpodは、最速の双方向データストリーミングの実演を行っていた。

実走行している複数台の車のハンドルやアクセルやブレーキ、GPS情報などをストリーミングでクラウドに収集し、それらのデータをほぼリアルタイムにモニタリングすることができる。展示されていたラジコンカーはLTE回線が装着されており、同じくLTE回線に接続されたスマートフォンアプリから実感としてはタイムラグがわからないほどのリアルタイム性でインターネットを介してラジコンの操作をすることができていた。

ブレインズテクノロジー

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ブレインズテクノロジー社のImpulseは異常検知に強いIoTセンサーデータ分析プラットフォームだ。高精度の異常検知をするためにデータの特性を分析し、最適なアルゴリズムやパラメータを自動的に選定をしてくれる。そのためデータサイエンティストが学習モデルを作成するのに頭を悩ませる必要がないという。

ソニー・グローバルエデュケーション

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ソニー・グローバルエデュケーション社のKOOVは子供が簡単にプログラミングを学ぶことができる「ロボット・プログラミング学習キット」だ。ブラウザアプリケーションで自由にプログラムを作成し、別途自分で電子パーツなどを組み立て配線したロボットに、作成したプログラムを入れて実行することが出来る。利用者同士で作ったプログラムを公開しあうコミュニケーションサービスは無料で利用することができるとのことだ。

ピクセラ

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ピクセラ社は、企業が容易にVRコンテンツをエンドユーザーに配信をすることができるVR配信プラットフォームを提供している。企業は、専用のコンテンツを作成、または撮影映像を配信したい場所に360度カメラを設置するだけでVRコンテンツが配信できる。例えば野球場では、球場内の臨場感を味わいながらフォーカスされたバッティングなどの映像を楽しむことができるとのことだ。

 

【関連情報】
AWS Sumit Tokyo 2017

 

AWS Summit 2017 レポート:

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