スティーヴ・バルマーがつくる、「米政府の財政データ」を視覚化する美しきウェブサイト

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マイクロソフトの元CEOスティーヴ・バルマーが1,000万ドルを投じた、米政府の財政データを示すサイト「USAFacts」。党派色のないオープンな取り組みで、人々にわかりやすく政府のデータを提供するプロジェクトである。

TEXT BY LIZ STINSON
TRANSLATION BY MINORI YAGURA/GALILEO

WIRED(US)

USAFacts

IMAGE COURTESY OF USAFACTS

チャータースクール(地域・教員・保護者などが州政府の認可を受けて公費で自主運営する公立学校)の昨年の生徒総数を知りたいとしよう。そうした情報を探すのにどこを調べるだろうか? おそらく、まずはGoogleで検索するだろう。そうすると、全米教育統計センター(NCES)のページに誘導される。そのページを起点に、丹念に掘り下げて調べなければならない。

ページをスクロールダウンすると図表のリストがあるので、2016年分をクリックする。またスクロールして目を凝らすと、何行にもわたって小さな文字がぎっしり並んでいるなかに、「272万1,786人」と書かれたデータが見つかるだろう。

政府のデータは公開されてはいるが、必ずしもアクセスしやすいわけではない。マイクロソフトの元CEOスティーヴ・バルマーとシアトルのデザインスタジオ「Artefact」による新プロジェクト「USAFacts」の目標は、そうした現状を変えることである。

マトリョーシカのようなデザイン

USAFactsは、1,000万ドル(約11億円)をかけた野心的な取り組みで、オープンで党派色がなく、非常に理解しやすいかたちで政府のデータを示す。2017年4月18日に開設されたウェブサイトは、地方政府や州政府、連邦政府の70を超える機関のデータ30年分を、適切にデザインされたハブにまとめている。

米政府は2009年に、データを一元管理する「Data.gov」を開設した。またオバマ前大統領は2014年、記録保存基準を満足のいく水準にするために、「デジタル説明責任と透明性確保法」、通称「DATA法」[日本語版記事]を承認した。USAFactsは、これまでのこうしたオープンデータプロジェクトと目的は同じだが、より利用されやすいプラットフォームである。官庁による取り組みや、同じく政府データの整理・解析を目指すOpenGovのようなスタートアップのプラットフォームとは、まったく似ていない。

USAFactsのサイトは、文字が読みやすい。操作は直感的だ。だが何よりも大事なのは、無味乾燥な事実と数字が、デザインスタジオのArtefactの手で興味を感じられるものに姿を変えていることだ。バルマーのチームは、2年の歳月を費やして政府のウェブサイトをくまなく調べ、PDFファイルやスプレッドシート、ウェブサイト、報告書からデータを手作業で抽出し、それらを大量のスプレッドシートやデータ表に入力した。Artefactのデザイナーは、そうした膨大な未加工情報を元に、大量のデータにアクセスし、理解できる一連のインフォグラフィックを作成した。数回クリックするだけでシームレスに移動して、収入や支出を詳細に調べることができる。

USAFactsのランディングページを訪問すると、インタラクティヴなグラフィックが現れる。「政府の金はどこから来て、どこに回されるのか?」という疑問に答えるために、Artefactはマトリョーシカのようなグラフィックを作成した。やりとりすればするほど、詳細がさらに明らかになる仕組みだ。インフォグラフィックのひとかたまりのデータの上にマウスポインターを重ねると、さまざまなデータセット間の相関性がわかる。クリックすると、その金の使途についてさらに詳しいデータが表示される。

Artefactのユーザーエクスペリエンスデザイナーであるデイヴ・マッコルギンは、次のように問いかける。「かなり詳細なものを掘り下げて調べているときにも、全体像が同時に見えることが必要です。それなしに、どうやって全体を理解するというのでしょうか?」

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USAFACTS-2014

2014年の政府支出を示すグラフィック。IMAGE COURTESY OF USAFACTS

一種の年次報告書

ソリューションのひとつは、適切なインフォグラフィックを選ぶことだった。Artefactが扱うデータは大量で、その多くは30年前に遡るものである。データセットが徐々に推移する様子を示すため、デザイナーは情報を「スパークライン」(密度の高い情報を示すのに利用されるシンプルな折れ線グラフ)にまとめることに決めた。スパークラインは、アップルが「Apple Watch」で心拍数を表示するのに利用しているほか、金融関係の印刷物がマーケットデータを示すのに用いている。

Artefactは、この折れ線グラフを利用して、30年分のデータを切り替えられるようにしている。たとえば、犯罪率に関するデータにマーカーをドラッグすると、関連データ(司法制度にかかる費用や窃盗事件の発生率など)も年を追って変化してきたことがわかる。「関連コンテンツに関係や傾向を見出してもらえるようにしたいと思いました」とマッコルギンは語る。

USAFactsは党派色や偏見のないプラットフォームを目指しているが、インフォグラフィックには本質的に主観が入るものだ。USAFactsの制作者は、データを発見した場所についてできるだけ透明性を保つことで、そうした問題に取り組んでいる。

バルマーは、純然たる事実が重要であり、USAFactsを「中立性を保てる政府の一種の年次報告書」と見なしていると語る。「人々が見つけて独自の分析を行えるように、データを掲載しています」。立派な使命であり、それはこれまで質の悪い提示方法によって阻害されてきたものといえる。このプラットフォームによって、探している政府データや、探していると自覚していなかったデータが見つけやすくなることは確かだ。それを利用するかどうかは、人々次第である。

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