米なきパリ協定後の世界で「大気中の二酸化炭素を売る」スタートアップを、スイスに訪ねる

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トランプ米大統領の「パリ協定」からの離脱宣言が注目されるなか、喫緊の地球温暖化対策に対し、あるソリューションが提案されている。チューリッヒ工科大学の同級生2人が始めたスタートアップは、二酸化炭素を大気中から回収しそれを「販売」するのだという。

TEXT BY SHOGO HAGIWARA

アルプス山脈の美しい山々を見渡す風光明媚なチューリッヒ郊外に、一風変わった建物がそびえ立っている。

巨大なエアコン室外機を並べたような外観をもつこの施設、実は大気中から二酸化炭素(CO2)を直接吸収し、商業用に純化・販売することを可能にした画期的マシンだ。去る5月31日にオペレーションがスタートし、記念すべき最初の“出荷”に向けて日夜操業を続けている。

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PHOTOGRAPH COURTESY OF CLIMEWORKS / JULIA DUNLOP

つい先日、ドナルド・トランプ米大統領が脱退の意向を明らかにした地球温暖化対策のパリ協定だが、多くの識者が、産業革命以前からの気温上昇を2℃以内に抑えるというターゲット達成を憂慮するなか、このCO2吸収マシンが形勢逆転の最右翼として大きな期待を集めている。

開発したのは、ノーベル賞受賞者を数多く排出する名門校、チューリッヒ工科大学(ETHZ)の同級生である、クリストフ・ゲバルドとヤン・ヴルツバッカーが立ち上げたテック系スタートアップ、Climeworks。ファンを搭載したコンテナ状のボックスで大気を吸引し、内部に設置した特殊フィルターでCO2を吸着する技術を開発した。

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クリストフ・ゲバルドとヤン・ヴルツバッカー。2人はETHZの同級生だった。PHOTOGRAPH COURTESY OF CLIMEWORKS / JULIA DUNLOP

フィルター容量がいっぱいになった段階で、今度はフィルターごと摂氏100℃まで一気に加熱し、そこから純化したCO2を抽出して商品として販売するビジネスモデルをつくりあげた。このプロセスで“製品化”されたCO2は、農家や炭酸飲料を製造するドリンクメーカーなどに販売される予定だ。実際、最初の顧客はトマトとキュウリを育てる農家で、CO2濃度の高い状態で育てる野菜は成長が早いというのが契約締結の理由だという。

「このマシンの利点は、CO2の吸引と加熱・商品化のプロセスを半永久的に継続できることです。各コンテナはモジュール化されていて、設置に必要な台数も自由に選べます。クライアントのビジネスの拡大ペースと合わせてモジュールの増加もできるので、スケーラビリティも十分備えています。また吸引と、加熱・商品化を行うマシンのサイクルをコントロールできるので、クライアントにとって最も効率的なCO2の商品化が可能なのです」と『Fast Company』のインタヴューに答える、ヴルツバッカー。彼は、次のように続ける。

「(パリ協定のターゲット達成のため)年間100億トンのCO2を処理する必要があるのならば、いますぐにでもマシンの設置を始める必要があります。我が社は、2〜3年のうちに十分な利益を生む市場を開拓する自信があります」

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生成したCO2は栽培農家などに“販売”される。PHOTOGRAPH COURTESY OF CLIMEWORKS / JULIA DUNLOP

このCO2吸引マシン1台を稼働するのに匹敵するCO2排出量(=カーボンフットプリント)は樹木1本あたりと同等ながら、CO2の処理量は大きく異なる。つまり植樹は続けながらこのマシンを積極的に導入し地球を温暖化から救うというシナリオが、現実味を帯びてくるのだ。

「吸引マシン1台で1年あたり50トンものCO2を処理できます。樹木1本で(吸収できるCO2量)は50kgがせいぜいなので、その効果は1,000倍以上です。わたしたちが置かれている現在の危機的な状況を鑑みると、このマシン導入への需要は今後高まっていくと信じています」と、ヴルツバッカーは語っている。

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